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第182話

鳴り響いたスマホのアラームを、白石さんは手荒く確認して。 「……ん、クソねみぃ」 虚ろな目をして呟いた白石さんは、オレのおでこにチュッとキスをする。そうして、ベッドから起き上がるとそのままトイレに向かってしまったけれど。 ……なんとも、気怠そうな白石さん。 白石さんって、寝起きは悪くないみたいだけど……この人、最初の煙を吸うまでは頭が働いてなさそうだ。 たぶん、白石さんは無意識でスマホのアラームを止めて。これまた無意識で、オレのおでこにキスを落としたんだと思う。 力の入り切らない淡い色の瞳に、オレの姿はぼんやりとしか映り込んでいなかった。 そんなことをオレが考えていると、白石さんがトイレから戻ってきたから。オレはベッドから上半身を起こすと、白石さんに視線を移す。 すると。 白石さんは、穿いているスウェットのズボンを腰までずり下げ、着ているTシャツをソファーに脱ぎ捨てて、ふわふわの髪をかきあげた。 ……なんか、すごい。 色気が漏れている白石さんは、煙草に火を点け深呼吸するとオレの隣に腰掛ける。そのままオレの肩に腕を回すと耳元に吐息が触れて。 「……はよ、星」 ……少し掠れたセクシーな低音で、朝の挨拶なんかしないでください。 「オハヨウ、ゴザイマス」 緊張しすぎてカタコトで話したオレは、白石さんに訊きたいことも、言いたいことも、いっぱいあるのに言葉が出てこなかった。 「ん……星、お前朝からご機嫌ななめ?俺、昨日すげぇー頑張って、お前のことベッドまで運んだんだけど」 「んっ…ぁ、それは、ごめんなさい。機嫌が悪いわけじゃないんですけど、なんというかその……服、着ないんですか?」 「今日暑いから、服着んのイヤ。誰に見られるワケでもねぇーし、俺の部屋だから問題ねぇーだろ」 そう言われれば、そうだけども。 「あの、目のやり場に困ります」 だって。 白石さんの綺麗な身体には、まだ薄っすらと歯型や爪痕が残っているんだ。 ……全部、オレが付けたんだけど。  冷静になって直視すると、なんとも恥ずかしく痛々しい痕。それに加えて、白石さんのセクシーな空気感がオレをとても困らせていた。 「星くん、朝からヤラシイ」 耳元で笑いながら、オレの隣で煙草を吸っている白石さんは、暑いからか、眠いからか……いつもよりも、色気がダラダラと溢れ出ていて。オレは白石さんを見ることができないまま、ブランケットを握りしめる。 「ヤラシイのは、オレより白石さんのほうですよ……なんか、今日ダメです」 「なんかダメって、何がダメか言われねぇーとわかんねぇーよ。あ、そういや昨日ランから連絡あった。教師と話ついたから、髪切らなくてもいいってさ。良かったな」 白石さんはそう言って、片手でオレの前髪をあげる。その手につられるように、オレの視線は白石さんに向いていた。 「ん、やっとこっち見た。星、お前はちゃんと俺だけ見とけよ」 咥え煙草で、ふんわり笑う白石さん。 ……どうしよう、この人すっごくかっこいい。

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