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第189話
星と過ごす時間を楽しみにしつつ、バイトと大学に時間を費やして。連休に入る前の木曜の夜、俺は星を家まで迎えに行った。
そうして、今に至るのだが。
「なんか、荷物多いな」
マンションの駐車場に車を駐めて、お泊まり用の星の荷物を持ってやる。
「あ、すみません。兄ちゃんが、どうせ毎週末白石さんの家にいるなら、もう荷物置いてきなさいって色々持たされちゃって」
申し訳なさそうに呟いた星だが、俺は理由を聞いて納得した。
光が上手いこと動いているおかけで、星の親も心配せずに泊まりを了承しているらしいから。ゴールデンウィーク後半は光たちとの予定があるが、前半の三連休は星を独り占めできる。
長い連休中は俺の家に居座るのだから、そのついでにこのまま荷物を置いていけばいいことだ。
「まぁ、光の言ってることも間違いじゃねぇーな。むしろ、良い判断だ」
そう星にフォローを入れ、俺は荷物を持って部屋まで向かう。星はそんな俺の服の裾をきゅっと軽く引っ張って、後ろからちょこちょこついてくる。
エレベーターで五階へと上り、当たり前に辿り着いた家の前。星を背後にくっつけたまま、俺は家の鍵を開けた。
「ん、どうぞ」
俺以外なら、星だけが入ることのできる空間。俺はその扉を開くと、後ろからついてきた星を先に家へと招き入れたけれど。
そう広くはない玄関で、星は靴も脱がずに俺にぎゅっと抱きついてきた。その拍子に閉された扉と、静まり返る室内。
「白石さん……会いたかった、です」
顔は見えないが、しっかりと届いた呟き。抱きしめてやりたいのに、両手の荷物が邪魔をする。
「俺も、すげぇー会いたかった。星、とりあえず中入れ。お前がちゃんと荷物の整理できたら、いっぱい可愛がってやるから」
「……え、可愛がるって」
「そのままの意味。ほら、靴脱いで」
星は真っ赤な顔をしながら、靴を脱いで手を洗うと荷物の整理を始めた。私服の着替えやら、部屋着やら……歯ブラシ等のアメニティ用品まで、様々な物を持ち込んできたようで。
ガサゴソと星が荷物の整理をしているあいだ、俺はコーヒーを淹れながら煙草を吸うことにした。
「お前はカフェオレ、ココアどっちがいい?」
「んー、カフェオレがいいです。あ、そういえば、兄ちゃんから白石さんに渡してねって、預かり物があるんだった」
光に貸した物などないし、光から物を貰うことなんて今までそんなにないんだが。星はキッチンに立つ俺に、たくさんの荷物の中からピンク色の紙袋を手渡してきた。
「ハイ、これ兄ちゃんから白石さんに。あと少しで荷物の整理終わるので、終わったらカフェオレ飲んでゆっくりします」
星はそう言って、荷物整理を再開する。
そんな星の姿を見守りつつ、俺はコーヒーを淹れ終えて。咥え煙草で、星から手渡された紙袋の中をそっと覗くと……そこには、光らしい贈り物が入っていた。
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