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第191話
心の声が洩れ出ることのないように、俺は星の膝に転がってみる。星がどんな表情をしているのかが気になった俺は、仰向けの姿勢で仔猫を見上げた。
「頭、重くねぇーか?」
「大丈夫です。気にせずに、力抜いててください。白石さん、いつもありがとうございます」
俺よりカラダが小さい星に負担がかかるのでは……と、思ったが。星に優しい微笑みを返された俺は、遠慮なく身体を預けることにした。
それにしても、想像より遥かに癒される膝枕だ。星の小さな手で頭を撫でられ、日頃の感謝までセットされたフルコース。
俺は、かなり思いつきで依頼したんだが。
こんなにも心地よく、穏やかな気持ちになれるのなら甘えることも悪くはないと思えた。
星といると、ただの日常が温かくて柔らかな時間に変わっていく気がする。星の持っている雰囲気がそうさせるのか、俺が星に心惹かれているからなのかは分からないけれど。
「……星、気持ちいい」
リラックス効果抜群の膝枕をされ、心地よさで目を閉じた俺がそう呟くと。
「白石さんに気持ちよくなってもらえて、オレも嬉しいです」
照れ混じりに、でも少しだけ得意げに。
行為が行為なら、それはそれはエロくて甘い言葉を俺は星から受け取った。
しかしながら、今は健全そのものなワケで。
すぐにR18指定が掛かる俺の脳内は、乱れに乱れている。
世間一般では、ゴールデンウィークは明日からで。今日はまだ、前夜祭にすぎないというのに。この調子で星と戯れていたら、俺は違う意味で死ねると思った。
けれど。
俺は今、しっかり星に安らぎを教えられている最中だから。性欲ばかりでなく、こうして触れ合えるだけで幸せを感じられることも事実だった。
世の恋人たちは、こんなふうに二人の時間を過ごしているのだろうか。それならば、俺が今まで経験した付き合いは、やはりただの遊びに過ぎなかったんだろうと。
そんな思考を巡らせている間も、星はゆっくりと俺の髪に触れていて。時折り俺の髪を指先に巻き付け遊びつつも、よしよしと撫でてくる手は止まることがなかったから。
「俺、お前のことすげぇー好きだ」
分かっていた、知っていた。
けれど、再確認して……そうして、伝えたいと思った言葉を俺は口にした。
すると。
「オレも、その……好きです、白石さんのこと。だから、えっと……」
俺の瞳が隠れているからか、星は素直に好きと言葉で返答をくれた。そして、おまけでもう一つ。
ふわりと、一瞬。
俺の唇に触れたのは、紛れもなく星の唇だった。小さなカラダを折り曲げて、頬に流れる髪は耳にかけ、そうして。
「……っ」
重なった俺と星の唇は、星の僅かな吐息とともに離れていってしまったから。閉じていた瞼を開き、星の表情を確認した俺は思わずニヤけてしまった。
……自分からキスしといて、その顔は反則だろ。
星は真っ赤な顔をして俯くけれど、下から見上げている俺からは丸見えなワケで。
「ぁ…え、んッ」
星からの煽り耐性がゼロの俺は、仔猫の首に腕を回すと半ば強引に星を引き寄せキスをした。
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