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第196話
苦しい。
平気だと思っていた、隠し通せると思っていた。でも、白石さんの優しさに包まれるたびに、新たに生まれる不安は消えなかった。
「……オレは白石さんが大好きで、好きって言葉で伝えも、キスしても、噛んでも……足りなくて」
一度溢れ出した涙は、簡単に止まってはくれない。もうどうにでもなれって気持ちで、オレは想いのすべてを白石さんにぶつけていく。
「白石さんと離れたくない、ずっと一緒にいたい。オレ、毎日白石さんのこと考えて……会えない日は寂しくて。一緒にいれるだけで幸せなのに、それでも、もっとって……触れて、ほしくて」
「星、ゆっくりで大丈夫だから」
白石さんはそう言うと、オレの涙を優しく親指で拭ってくれた。それでも涙が止まらないオレを見ると、白石さんはひょいっとオレを抱き上げてそのままベッドまで移動する。
「あっ……え、ちょっと」
「こっちで聞くから、ちゃんと話そう。星、お前さ、もしかして昨日の夜のこと気にしてたりする?」
そう言われて、オレは胡座をかいた白石さんの上に向き合うように座らされた。白石さんに抱きつけて、安心できて、甘えられて、オレが落ち着ける体勢だから。
オレは白石さんの首に腕を回して抱きつくと、白石さんの問いにこくこくと頷いた。
「あー、不安にさせて悪かった。先に言っとくけど、お前が嫌いだとかそういんじゃねぇーから」
「でも、白石さん……オレのコト避けてたもん、だからっ」
ぐすん、と。
鼻を啜りながらも、オレは白石さんに感じたままを伝えていくけれど。
「それは、俺の問題。一緒に寝てやれなくてごめんな……でも、これ以上はマジでヤバいから。お前のコト、俺は大事にしたいし」
「一緒に寝るのは、大事じゃないんですか?オレだけ気持ちよくなるのは、ヤバいことなんですか?白石さんはやっぱり、女の子じゃないと……ッ、ん」
「星、ちょっと黙ってろ」
いきなり塞がれた唇。
喋りたくても話せないし、それよりも。泣いたせいで鼻が詰まって、オレは息ができない。
「ん、っ…はぁ」
ちゃんと話そうって、白石さんはそう言ってたのに。オレがあまりに暴走したからか、白石さんからのキスはいつもと違う感じがして。
「…ぁ、ふ…ンッ」
息をして、でも上手く呼吸ができなくて。白石さんにしがみついたオレの唇からは、荒くなった吐息が漏れていく。
「し、ぃ…ん、ッ」
呼吸しようと口を開くほど、オレは白石さんと深く繋がって。唇の端から零れ落ちそうになるのは、飲み込み切れない唾液だった。
「ンッ、はぁ…ァ」
時間をかけて離れていった唇を見つめ、その先にいるはずの白石さんをオレはぼんやりと視界に入れたけれど。
「……キスだけでこんなになるヤツが、最後まで持つワケねぇーだろ。それに、俺はお前で欲情してんの。お前も同じ男なら、この意味分かるだろ」
そう言われ、オレの腰は白石さんに捕まえられて。跨っているオレの下半身に当たるのは、白石さんのソレだった。
「ん、え……でもっ」
男性として反応する部分があるのは、オレだってもちろん知っている。けれど、でも……だったら、オレはどうしたらいいの。
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