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第198話
二人で大騒ぎして、言い合っていたのに。
オレの言葉をきっかけに、時が止まってしまった。勢いに任せて盛大に本音を吐いたオレは、あとから襲ってきた羞恥心で倒れてしまいそうなのに。
「星」
白石さんは、俯くオレの名前を呼ぶ。
その声は、さっきまでオレに吠えていた人とは思えないほど甘い囁きで。オレはくいっと顎を掴まれて、白石さんの鋭い視線に捕まった。
「……いや、えっと、その」
見つめられるだけで、ドキドキして。
オレ、白石さんにすごいコト言った気がするけれど。何をされても構わないなんて、素直に思えるわけじゃない。
でも、白石さんになら、白石さんとなら。
……オレは。
「星……お前、本当にナニするか分かってんのか?」
流れのままの発言をオレは本当に理解しているのかと、白石さんからそう尋ねられても。
「あの……たった今、白石さんにナニするか教えてもらいましたよ?それに、好きな相手にならなんだってできちゃう、でしょ?」
オレは白石さんから言われた言葉を思い出して、そっくりそのままお返しした。すると、白石さんは深く息を吐いて。
「……ったく、お前には敵わねぇーよ。俺がどれだけ我慢して、お前のこと考えたか……大切にしたいのは、この先も変わらねぇーし、大事にしたいのも嘘じゃねぇーんだけど」
白石さんはそう言ったあと、泣き止んだオレの頬にキスをする。
そして。
「いいか、先に言っとくぞ。ダメ、イヤ、ムリ、ヤメテ、その手の類いの言葉を言われても、俺もう途中で止めてやれる自信ねぇーからな……それでも、本当にいいのか?」
「え……あ、うん」
優しい白石さんがオレのためを思って、最後の最後にご忠告と選択肢のプレゼントをくれたけれど。オレも、オレだって、我慢できないのは同じだから。
その手の言葉を言わないって、言い切れないし。いいかどうかは、正直なところしてみないと分からないけれど。
「白石さんの全部、オレにください」
そう言ったオレの言葉に、一瞬、見開かれた瞳……でも、それはすぐに細められて。
「お前になら、いくらでもくれてやるよ」
そう言った口元は、オレがまだ知らない世界へと導いていく。
「ん…っ」
ゆっくりと触れ合った唇が、いつにも増して熱く感じるのは気のせいじゃないと思う……というより、オレ、なんかヤバいかも。
「はぁ…んっ、ン」
お互いの気持ちを確認できて、こうして互いに求めているからなのかもしれないけれど。しがらみがなくなった白石さんは、魅惑的すぎて、もうすでにオレの心も身体も追いつかない。
優しさはいつもと変わりないのに、こんなにも強く求められる感覚なんて、オレは知らなかったから。
「星……」
オレの名前を呼ぶ白石さんの声でさえ、淡い刺激に変わってしまうんだ。
「ぁ、ん…ッ、ぅ」
少しずつ深まっていくキスに、オレの頭はくらくらして。自分でも分かるくらいに、ドキドキと高鳴る胸の音がうるさかった。
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