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第202話
【雪夜side】
セックスについてとんでもない言い合いをし、泣きながら強請られて。今まで耐え忍んでいた欲を抑えることができずに、今に至るのだが。
好きな相手と繋がることが、こんなにも幸せなだったなんて俺は今まで知らなかった。
相手を思いやり慈しむことの大切さを教えてくれた星は、俺を感じたまま意識を手放すように力尽きて眠ってしまったけれど。
ランから聞いた後始末の方法で、星をキレイにしてやって。シーツを交換し終えたベッドの上で、幸せそうに丸まって眠る星の頬をそっと撫でた俺は、ベットに腰掛けると煙草を咥えて火を点けた。
……本当、コイツには敵わねぇーな。
俺が愛して止まない星くんは、とんでもなく天然な誘い受けだったようで。俺は快感に素直な仔猫に煽られまくり、最後まで離れたくないと大泣きされて。
星が自ら声を抑えるために噛んだ俺の肩には歯型が残り、縋っていた背中にはいくつかの爪痕がくっきりとついている。
ヤり方も知らなかったクセに、ケツって言ったら真っ赤な顔して怒ったクセに……それでも欲しいなんて言われたら、もう無理だった。
体力ねぇーのに、小さなカラダであんなに乱れて俺のこと欲しがって。終いにはそのまま一緒がいいと強請られたら、そりゃあ我慢なんてできねぇーわ、俺。
むしろ、今までよく頑張りましたね……と、誰か何処かで俺に囁いてくれることを願う。
星も俺と同じように、繋がりたいと思っていてくれたこと。快楽に溺れる前に、コイツの気持ちをしっかりと聞いてやれて本当によかったと思う。
昨夜は俺の理性が保たないと判断し、俺の勝手で一緒に寝てやれなかったから、星には不安な思いをさせてしまったけれど。
今こうして、幸せいっぱいで眠っている星の姿を見ると、お互いにそれも大事な経験だったのではないかと捉えることができそうだ。
何はともあれ、心もカラダも繋がってみると得られる幸福感は計り知れなくて。星が愛おしすぎて、俺の頭はおかしくなりそうだと思った。
……いや、もう充分おかしいか。
花言葉を伝えてみたり、買い物からの帰り道でご当地グルメのCMソングを一緒に歌ってやったり。恥ずかしがる星のためを思って、言葉を濁してみたり。
俺がらしくないことをしている自覚はちゃんとあるものの、自分らしさなんてものは自分が一番把握できていないんじゃないかと思った。
ソレもコレも、この仔猫が俺にさせている言動なワケで。今は幸せそうに眠っている星が、目覚めたら一体どんな顔をするんだろうかと。今から楽しみにしている俺は、かなりの幸せ者だと思った。
全てを委ねて、俺を求めてくれた星。
こんなにも幸福感に溢れた賢者タイムを、俺は経験したことがない。ピロートークなんてものをしたことは、過去に一度もなかったが。満たしたいのはカラダだけでなく、心も大切にしてやりたくて。
明日の朝を心待ちにしながら、俺は星の額にキスを落とすと煙草の火を消し眠りに就いた。
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