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第205話
幸せな時間はそう長くも続かずに、今は男四人で車の中。もちろん運転は俺で、助手席に星。ついでに、後部座席でイチャつく友人二名様。
星は運転する俺を眺めては、時折真っ赤になって俯く仕草を繰り返し、友人二人は好き勝手に遊んでいる。
「優の運転と違って、ユキちゃんの運転はやっぱり安心感あるよね。優が運転すると、ジェットコースターに乗ってるみたいでドキドキが止まらないの」
「……いつか事故って死ぬぞ、お前ら」
「優と二人なら、それでもいいよ?」
「はぁ……てか、車はねぇーけど光も免許持ってんだろ。優じゃなくて、お前が運転すりゃいいだけの話じゃねぇーのか?」
俺と光の会話を聞いてる星は、俺の言葉にコクコクと頷いていた。
「……光は王子様だからな、執事が運転するのが当然だ。俺がいる以上、光に運転はさせない」
「んふふ、そういうことです」
……いや、どういうコトだよ。
「優、そう思うなら安全運転を心掛けろ。王子の命守るのも執事の役目じゃねぇーのかよ……ってか、執事って。優ってすげぇー勉強できるクセに、頭イカれてんのな」
「白石さんっ、お友達にイカれてるとか言っちゃだめですよ?」
「そうだよ、ユキちゃんっ!イカれてんのはユキちゃんも一緒でしょ?あ、そうそう。俺からのプレゼントどうだった?気に入った?優と二人で一緒に選んで決めたんだ!」
優と二人でって、優はただ連れて行かれただけにすぎないんだろうけど。
「気に入るもナニもいらねぇーよ、あんなもん。返すから優と使え、優と」
「白石さん、兄ちゃんから何もらったんですか?そういえば、何もらったか結局オレ聞いてないです」
「あれ、せい知らないの……ってことは、まだ使ってないの?せっかく連休だったから、丁度いいと思って渡したのに。あれはね、せいとユキちゃんが仲良くなるためのモノが入ってたんだよ」
「仲良くなるためモノって、結局なんなんですか?白石さん、何もらったか教えてください」
「教えてやってもいいけど、今度二人ん時にゆっくりな」
「ユキちゃん変態ぃー、ヤラシイ、二人きりでナニするつもり?」
「雪夜、気持ち悪い」
「あーもうっ!ごちゃごちゃうるせぇーなぁ、なんもしねぇーよっ!つーかお前ら、あんま調子乗るとその辺に捨ててくぞ。星、悪いけど煙草取って」
星は箱から煙草を一本取り出して、口を開けた俺にひょいっと咥えさせてくれる。何も言わずに片手を出すと、シルバーのジッポを手渡してくれた。
「ん、サンキュー。お前いい子だな、よくわかってんじゃん」
丁度信号待ちになり、咥えた煙草に火を点けひと呼吸する。
にっこり笑った星の頭を軽く撫でて、すっかり静かになった後部座席をミラー越しにチラ見すると、優が光の頭を抱え口付けていた。
目が合った優は、俺を見てニヤリと笑う。
星が振り向いたらどうすんだ……っつーか、人の車でナニやってんだ。星が寝たら覚えとけよ、お前ら……そう心の中で呟きながら、俺は目的地まで車を走らせた。
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