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第206話
道中でコンビニへ寄ったり、道の駅をふらついたり……色々とさせられながらも、とりあえず目的地のゲストハウスまで辿り着いた俺たちは、荷物の整理をしている。
ごく普通の一軒家のように見えるが、こういったスタイルの宿も悪くないと思った。リフォームしたばかりらしく、内装はかなりキレイで。和テイストではあるものの、寛ぎやすそうな空間造りがなされている。
人数分の布団なり何なりは、優の親父さんが管理人に依頼し、色々と用意しておいてくれたらしく、素泊まりするなら申し分ないと思った。
かなりありがたいことなのだが、優の家は一体どうなっているのか無駄に考えてしまう。
寺の人は心が広いのか……だから寺の息子の優は光の我儘にも付き合えるのか、と。勝手な解釈をしつつも荷物を整理し終えた俺は、ソファーに座って隣にいる星の頭を撫でながら寛いでいる。
「ねぇー、とりあえず海行こ?優、海、うみ、うみぃー!!」
優に荷物整理を全て任せて暇を持て余す光が、待ち切れずに海に行くと騒いでいる。
星はそんな光の姿を見て、少し困ったような顔をしながら自分も行きたそうにソワソワしていた。
「光、わかった。行くから、あまり騒ぐんじゃない。雪夜は運転で疲れただろう……鍵、渡しておくから。星君とあとから来ても構わないし、ここで休んでいてもいい」
光のお守りをしなきゃならない優から、海までの道のりと好ましい格好の説明を受け、俺はとりあえず優から家の鍵を預かると、俺と星を家に残して、足早に去っていく二人の背中を見送った。
車内でイチャついてはいたが、あの二人も自分たちだけの時間がほしいのだろう、と。それなりに気を利かせてやることにした俺は、ソファーに座る星の膝にゴロンと転がった。
「海行くの、ちょっと休んでからでもいいか?思いの外距離あったし、お前と二人きりにもなりたかったし」
「白石さん、運転お疲れ様でした。色々寄ったから、結構時間かかっちゃいましたね。海に行くのはいつでも大丈夫なので、今はゆっくり休んでください」
兄貴のわがままぶりとは異なり、聞き分けの良い俺の恋人は、優しく笑いながら俺の頭を撫でてくれる。
「星、ありがとな。やっぱ俺、お前のコトすげぇー好きだわ」
「オレも、白石さん大好きです……あ、兄ちゃんから何もらったか教えてください。さっき車で、二人きりになったらって言ってましたよね?」
二度も誤魔化し凌いできたが、さすがに三度目はないらしい。そんなに気にすることかと思うが、星がどうしても知りたいなら仕方ない。
「……教えるけど、怒んなよ。俺が欲しいって言ったわけじゃねぇーし、光が勝手に渡してきたんだから」
「はい、わかりました。白石さんには怒りません」
康介とかなら簡単に言えるのだが、何故か星には言い難い代物は。
「……光から俺がもらったのは、コンドームとローションだ」
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