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第207話

「仲良くなるためって……あ、ウソ。え、兄ちゃん……でも、白石さんは返すから優さんと使えって、あれは冗談?」 真っ赤になってフリーズする星に、俺は起き上がって何も言わずに星の唇を奪った。 「んっ、やぁ…」 口では嫌だと洩らしても、可愛い星くんは抵抗しないのを俺は知っている。光と優の件については、光の口からそのうちしっかり話すだろうし……今は俺だけ見ていてほしいなんて、そんな思いをひた隠したまま俺は星の名を呼ぶ。 「星」 ゆっくり唇を離すと、真っ赤な顔をして俺を睨む星と目が合う。その表情は、俺を誘ってるようにしか見えないんだが。 「……あの、白石さん、ここ、優さんのお家です」 ……お前の兄貴は人の車ん中で、その優サンと堂々キスしておりましたが。 内心、本音が出そうになったのを俺は無理矢理飲み込み、この話題から話を逸らすために海へ向かう提案を持ち掛ける。 「……そろそろ海、行ってみるか?」 「うん、行きたいです。でも、白石さんは全然休めてないでしょ?大丈夫ですか?」 本当は、光たちと一緒に海へ行きたくてソワソワしてたクセして、俺の心配をしてくれる仔猫は気遣いができるヤツだと思う。 「お前の可愛い顔見れたから、もう大丈夫だ。とりあえず、家出るか」 俺の返答に照れつつも、頷いた星を連れて。俺は家の戸締りを終えると、優が言った通りに大通りへ出て、真っ直ぐ南に歩いて行く。 「……海、近すぎじゃねぇーの」 ものの数分で砂丘まで辿り着いた俺と星は、あまりの近さに驚いたけれど。 「砂浜を歩いて行かないと、海は見れないよーって兄ちゃん言ってから、海はもう少し先にあるのかもです」 とりあえず、目的地まで進もうと決めた俺たちは、砂丘に足を踏み入れる。ここまで歩いてきたコンクリートとは違い、サラサラの砂に素足が埋もれていく感覚は新鮮だった。 素足にビーサン、又はマリンシューズで来いと優から説明を受けたが、その理由はすぐに分かった。スニーカーを履いてきていたら、シューズの中まで砂まるけになって、大変なことになっていただろうから。 「白石さんっ!砂浜の砂サラサラですよ、すごいです!」 楽しそうに砂浜の上を歩く星の後ろを、俺はスラックスのポケットに両手を突っ込んで歩いていく。 一つ、二つ、と丘を越えたときだった。 「白石さんっ!海、見えましたっ!!すっごい綺麗ですっ!!」 俺の視界に入ってきた海は、太陽の陽射しが反射して水面がキラキラと輝いていた。ザーッという波の音と、微かな潮風が香る。 そんな海を眺めて嬉しそうに笑う星は、とてもキレイだった。 「ん、すげぇーキレイだな。海も、お前も」 「綺麗なのは、海ですよ?兄ちゃんたちはどこにいるんでしょう……白石さん、もっと海の近くまで行きましょ?」 少し照れながらも、星はそう言って俺の服の裾を引っ張って歩き出す。 「掴むの、そっちじゃねぇーだろ……ほら、あんまり急ぐと転けるぞ、星」

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