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第216話

心ゆくまで温泉を楽しんだオレたちが次に取った行動は、くつろぎスペースでの水分補給だった。 「優っ、腰に手っ!そうそう、それでイッキに飲み干して?」 兄ちゃんの声に合わせるようにして、優さんは仁王立ちのままごくごくと喉を鳴らし、一気にビンの牛乳を飲み干していく。 「優さん、すごいです」 「うんうん、上手に白いのごっくんできてるね!」 「いやいや、お前ら。風呂上がりっつたらビールだろ……ってか、光は言い方をどうにかしろ」 「えー、ユキちゃん分かってないなぁ。家ならビールだけど、温泉ならビンの牛乳だよ」 ビン牛乳か、ビールか。 どっちでもいい口論をしている兄ちゃんと白石さんの隣で、オレはゆっくりコーヒー牛乳を飲んでいる。 「美味かった。やはり、風呂上がりは牛乳一気飲みに限る……ほら、光の分だ」 「ありがと、優。温泉の後はやっぱり、フルーツ牛乳が一番だよ」 牛乳派の優さん、フルーツ牛乳派の兄ちゃん、コーヒー牛乳派のオレと、牛乳よりビール派の白石さん。 「風呂上がりでさっぱりしてんのに、なんで甘いもん飲まなきゃなんねぇーんだ。だったら、俺はまだ水の方がいい」 「ユキちゃんってば、ホントおバカさん。ただのフルーツオレじゃないの、瓶に詰められたこのコだから特別なんだって」 好きな飲み物を飲めばいいのに、兄ちゃんと白石さんの意見の違いが面白く感じてしまう。オレも少しだけ、このメンバーで行動することに慣れてきたのかもしれない。 そんなことを思いながら、両手でコーヒー牛乳を持っているオレを見て白石さんが声を掛けてくる。 「星は、コーヒー牛乳か……ってかさ、お前コーヒーブラックで飲めねぇーけど、ミルク入ると好きに変わるのな」 「うん、だって白石さんみたいで美味しいですもん。甘くて、でもちょっとほろ苦くて、優しい味になるから好きなんです」 オレが素直に理由を話しただけなのに、大学生組の三人は動かなくなって。 「……これは、誰も勝てないね。ユキがせいに惚れ込む理由がよく分かるよ、うちの弟可愛すぎる」 最初に口を開いた兄ちゃんはそう言って、隣にいる優さんを見る。 「確かに、この告白は星君らしさで溢れている。瞬殺されたな、雪夜」 兄ちゃんに続いて、今度は優さんが白石さんを見るけれど。白石さんは、牛乳ビンを持つオレの頭を無言で優しく撫でるだけで。 そんな白石さんの姿をからかうことはせず、兄ちゃんと優さんも無言のまま微笑んでいるだけだった。 オレはよく分からない空気感の中で、コーヒー牛乳を飲み干すと、返却用のコンテナに牛乳瓶を入れる。 すると。 「ありがとう、星」 オレの横にいた白石さんは、そうお礼を言ってきて。オレは首を傾げながらも、とりあえず頷くことにした。 「ご飯行こうっ!いっぱい遊んで温泉浸かってのんびりしたら、お腹空いちゃった」 兄ちゃんのその言葉で、オレたちを纏う空気は平常に戻って。お食事処で食事を済ませると、帰りにコンビニでたくさんのお酒を買い込み、宿へと向かったんだ。

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