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第218話
「このまま飲んでるだけじゃつまんないし、王様ゲームするよ。もちろん王様は俺、なんたって、金髪なんだから」
そう言って笑う兄ちゃんの目は、少しも笑っていない。オレは、白石さんたちといて学んだことがある。オレたちはきっと、兄ちゃんの逆鱗に触れたんだ。
「それ、王様ゲームじゃねーよ。誰がやるか、金髪関係ねぇーし」
「じゃあまずは、優がユキにキス。あ、ちゃんと口にして」
「兄ちゃんっ?!ちょっと何言ってるの?!」
びっくりするとか、驚くとか。
オレの兄ちゃんは、そういった類いの言葉をオレたちに浴びせるのがとても上手だけれど。さすがに度を超えた内容に、オレは慌ててしまった。
「なんで、俺が優とキスしなきゃなんねぇーんだよ。誰がするか、バカ王子」
「そのバカの命令でキスすんのは、ユキだよ。優、できるでしょ」
……なんか、イヤな予感しかしない。
「光がしろと言うなら、したくはないができないことはない」
「でもっ……優さん、ちょっと頭大丈夫ですか?白石さん男ですよっ?!兄ちゃんも、変なこと言い出さないでよっ!」
オレの言葉を無視して、少しずつ、ゆっくりと白石さんに近寄っていく優さん。白石さんがオレ以外の人とキスするなんて、耐えられない。
たとえソレが兄ちゃんの命令だったとしても、オレは絶対イヤだから。だからオレは、もうなりふり構わず、ぐっと白石さんの髪を引っ張ったんだ。
「……うぅ」
オレが思い切り髪を引っ張ったせいで、白石さんはオレの膝の上に倒れ込んできて。その影響で、なんとかキスは止めることができたけれど。
「イッ……てぇー……ケド、心配しなくても、俺はお前としかしねぇーよ……優、それ以上近寄ったら容赦無く殴るから」
威圧感のある白石さんの声で、シンと静まり返る部屋。動きがピタリと止まった優さんと、ヘラヘラと笑い出す兄ちゃん。オレは白石さんの下で埋もれていた身体を起こし、白石さんの頭皮を労った。
「えへへっ、みんなキスだけで慌てちゃってホント面白いっ!!」
「お前がわりぃーんだろーが、悪ふざけも大概にしろ。優より、お前殴った方が早いかもな。なんたって、命令してんのは王子様なんだから」
「白石さん言いすぎ、兄ちゃんもやめて」
白石さんの比喩するような発言には、しっかりと怒りが込められていて。オレは最悪の事態を避けたくて、二人のあいだを取り保とうと必死だ。
けれど、笑っていた兄ちゃんの目が切なそうに細められて。
「ユキも変わったね。そんなにせいが好きなんだ……ちょっと、妬けちゃうかも」
兄ちゃんが纏う空気が一変し、そうして優さんが纏う空気感も変わる。
「妬けるって……どちらにだ、光」
優さんは兄ちゃんを睨みつけると、テーブルの上にある缶ビールに手を伸ばす。
そうして。
「あーっ!優、だめっ!飲まないでっ……お願い、やめッ」
兄ちゃんたちが騒ぐ中、オレの頭はだんだんぼーっとしてきて。初めて感じる不思議な感覚に、囚われていったんだ。
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