235 / 570

第235話

振り返ると、お仕事モードでふんわり笑ってオレを見る白石さんがいて。 「……白石、さん」 ずっと、会いたかった。 たった2週間って、思われるかもしれないけど。オレは、ずっとずっと、白石さんに会いたくて。 ここに来るまで、白石さんは迷惑に思うかもって……不安に感じていたオレを、そっと包み込んでくれるような白石さんの笑顔に安心する。 「久しぶり……っつーか、やっと来たな。俺、星がショップに来てくれんの、ずっと待ってたんだけど」 ……あ、話し方、いつもの白石さんだ。 確かに毎日のように今日は何時からバイトだよって、連絡してくれていたけれど。ショップで待ってるなんて、そんな素振り……あったっけ。 でも、白石さんもオレに会いたいって思っててくれてたってことだから。オレはすごく嬉しくて、でもその気持ちをここでは表現できなくて俯いてしまう。 「本当は、毎日でも会いに来たいくらいなんですけど……買う物もないのに来るのも変だし、お仕事中なのに邪魔しちゃ悪いかなって思って。オレ、なかなか来られなくって」 オレは手に持っていたタオルをギュッと握りしめ、嬉しさと恥ずかしさで真っ赤になっていく。 「なら、お前は今日なんのために来たんだよ。そんなに顔赤くして、俺に会うためじゃねぇーの?」 「それは、もちろんそうなんですけど。実はね、来週弘樹の誕生日だったことを思い出して。プレゼントを選びに、ショップに寄ったんです」 「アイツ、誕生日ちけぇーのか。ふーん、誕生日ねぇ……んで、買うものは決まってんのか?」 「それが、えっと、まだなにも」 せっかく勇気を出して、白石さんに会いに来たんだから。できることなら、お仕事している白石さんを独り占めしたい。やっと会えたんだから、少しでも長く、一緒に。 オレの幼い頭で、必死に考えた。 仕事中の白石さんを、独り占めできる方法。 「あのっ、友達の誕生日プレゼントを、ショップ店員のお兄さんと一緒に、選んでもらうコトって、できたりしますか?」 相変わらず小さな声で、そう言って白石さんを見上げたオレに。 「もちろん、お客様のご要望にお応えするのがお仕事ですので。たっぷり接客させて頂きますよ、お客様」 白石さんはお仕事モードで、ふわりと爽やかに微笑んでくれた。笑い方も話し方も、出ているオーラさえいつもと全然違うけれど。 ……やっぱりこの人、すっごくかっこいい。 一人でドキドキしているオレに、白石さんは耳元でそっと囁いてくる。 「なんてな、本当は今すぐにでも抱きたいくらいなんだケド。仕事中だし、あんま距離ちけぇーと、うるさい野郎が一人いるからな……ちゃんと一緒に選んでやっから、俺の側から離れんなよ」 この人は、こんなに簡単にオレの体温を上げて。心臓の鼓動を、早くさせる。 オレが会いたくてたまらなかった人は、何をしててもかっこいい、オレだけの白石さん。

ともだちにシェアしよう!