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第239話

薄暗い部屋の中。 前に来たときと変わりのない、きちんと片付けられた部屋。 色々と話したいのに言葉が出てこないのは、白石さんがオレの唇を塞いでいるからで。 「んっ…ぁ、はぁ…ッ」 オレは、与えられる甘いキスに酔いしれてしまう。羽織っていた制服のジャケットが、ばさっと冷たいフローリングの床に落ち、オレの身体が少しだけ軽くなった気がした。 「久しぶりに会えたかと思ったら、俺の言うコト聞かずにあんな目あって」 スルスルと外される、紺色のネクタイ。 白石さんは外したネクタイを軽く口に咥えると、オレを見てニヤリと笑う。 その仕草と熱い瞳に、くぎ付けになっているオレの両手は、さり気なく後ろへと回されていて。咥えられていたはずのネクタイが、オレの両手に絡みついていく。 「あの、ちょっと……」 クスリと笑いながら、甘噛みされる耳。 白石さんの手によって、器用に縛り上げてられていくオレの両手。ぐっと肩を押されて、オレはベッドに倒れ込んだ。 自由が利かなくなってしまった、オレの両手。 せっかく会えたのに、これじゃあ白石さんに抱きつけない。オレは、白石さんに抱きついて甘えたかったのに。 「白石さん、これ……外して」 オレの上に跨った白石さんが、ニヤリと笑う。 「イヤだったら……できる範囲で、抵抗してみせろ。ただ、止めてやれないと思うし、止めるつもりねぇーから」 抵抗って。 何をどう抵抗すればいいのか、オレには分からない。両手は縛られているし、白石さんの手によって、溶かされているオレの身体は、もうすでに抵抗なんてできるはずがないのに。 「白石さん、あの…いッ!」 強い力で押さえ込まれて、首筋を容赦なく噛み付かれる。そのまま舐め上げられてい首筋は、痛みよりもゾクゾクとした味わったことのない感覚をオレに教えて。 「あっ…やぁ、だっ…」 甘くない刺激に、思わず声が洩れた。 身体に刻み込まれていくような、痛いくらいの刺激にオレは眉を寄せる。 「ん、そうそう。その調子」 けれど、オレのその反応で楽しんでいるのは、紛れもないオレの恋人だ。 「あの、それってどういう…んっ」 噛み付かれた唇。 今度はそこを優しく舐め上げられて、オレの身体はその刺激を素直に受け入れる。柔らかく絡められ吸われる舌の熱が、身体中に伝わっていく。 「んっ…ぁ…はぁ、やっ…」 「お前、言いつけ守れねぇーだろ。言っても聞かないなら、カラダに教え込むしかねぇーってコト」 「ぁ…っん、白石、さん」 「お前が頭でどれだけ抵抗しても、カラダは素直だからな。俺だけのものだって、イヤってくらいに感じさせてやる。だから星……目、逸らすなよ」 低く囁かれる声に、力が抜けてしまう。 カラダに教えるって、オレが白石さんだけのものだって……もう充分、分かっているつもり、だけど。 「ン、やっ…見ない、で」 「無理、もう今日は優しくできねぇーよ」

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