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第244話
月曜日。
学校に行く前のオレは、弘樹に伝えるようにと言われた伝言の内容を頭の中で確認する。
白石さんに頼まれた伝言の意味が、オレにはさっぱりわからない。けれど、頼まれごとを引き受けたからには責任があるから。
白石さんに洗濯してもらい、すっかり綺麗になった制服のシャツに袖を通して、今日のオレはいつもより少しだけ緊張していた。
今日は弘樹の、16歳の誕生日。
家のチャイムが鳴り、弘樹が迎えに来たことを知る。ちゃんと忘れ物がないかを確認して、オレは玄関のドアを開けた。
オレと同じ制服を着て、いつものように家の前で待っている弘樹。でも今日からは16歳、オレの誕生日がくるまでのあいだは弘樹の方がちょっとだけお兄ちゃん。
「おはよ、弘樹。ハイこれ、誕生日プレゼント。大した物じゃないけど」
「はよ、セイ……俺の誕生日、ちゃんと覚えててくれたんだ。ありがと、なぁ、開けていい?」
小さな紙袋の中をそっと覗いた弘樹は、嬉しそうに微笑んでくれる。そんな弘樹に、オレはちょっとしたクイズを出したんだ。
一字一句、白石さんから教えられた通りに。
「一つはオレからで、もう一つは白石さんから……さて、どっちがオレからのプレゼントでしょうか?」
そう言って、オレは弘樹からの返事を待つ。
紙袋の中に入っているのは、スマホのケースと、薄手のタオルマフラーの二つ。どちらもショップのロゴが入っているけれど、果たして弘樹は正解できるのかなって。
前に一度、弘樹と話をしていたとき。
スマホのケースがキズだらけだから、買い替えたいって。どうせ替えるなら、今度はショップのやつがいいって。
そう弘樹が言っていたことを思い出したオレは、スマホのケースを選んだけれど。
「スマホのケースがセイからで、タオルマフラーが白石さん……じゃね?」
じっくりと悩んだ弘樹の答えは、大正解だった。大正解、ということは……オレは、弘樹を次のステップへと誘導しなきゃならなくて。
「すごいね、弘樹大正解っ!じゃあ、白石さんからの伝言……もう一つのプレゼントを教えるね」
白石さんから、弘樹に伝えるようにって。
頼まれた伝言は、弘樹の誕生日をお祝いする白石さんの気持ちだから。
「誕生日おめでとう。今日1日だけ特別に『あの条件』を取り消してやるよ……だって」
「……あ、え?」
弘樹の反応が思っていたよりも薄っぺらくて、オレは上手く伝えられたのか不安になってしまう。それでなくても、オレには意味の分からない話なんだから。
「オレには、何のことだかさっぱりわかんないんだけど……白石さんは、弘樹にそれだけ言えば分かるはずだって。でも簡単にプレゼントできるものじゃないから、弘樹がクイズに正解できたら教えてやってくれって」
白石さんに言われた通りに、オレは弘樹に説明するけれど。やっぱり反応がない弘樹の態度に、オレは少しだけイラッとして。
「……ねぇ、弘樹は意味分かってるの?」
反応してよ、と。
そんな気持ち込めつつ、オレは弘樹を見上げて首を傾げた。
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