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第252話

……だりぃ。 寝ぼけた頭と怠けたカラダで、部屋のカーテンを開けて外を見る。しとしとと降っている雨に、余計にだるさが増した気がした。 どうやら、俺の住んでいる地域も梅雨入りしたらしい。 その影響か、ここ数日は雨ばかりだ。 きっと、この降り続く雨が止む頃には茹だるような暑さがやってくる。 煙草を咥えてぼーっとして、少ししてからコーヒーを淹れて。朝食を摂る気にはなれず、とりあえず俺はソファーに寝転がった。 今日は大学の講義もなければ、バイトもない。 かといって、外は雨だし出掛ける気もない。部屋は片付いているし、提出予定のレポートも、すでに終わっている。 ……やることねぇーや。 ようやく、時間がとれた週末。 今日の夜21時に、星ん家の裏の公園で待ち合わせ。星を迎えに行く時間まで、特にやることのない俺は映画でも観ることにした。 康介から勧められた映画をサブスクで漁り、とりあえず流し観る。喋るクマが下品ですげぇ面白いからと、康介から言われて観ているが。 俺の隣で何も言わずに転がっているステラも、星が願えば喋るようになるんじゃないかと、かなりアホなことを思ってみたりした。 ステラは、星のお気に入り。 最初は星に似ているからと、衝動買いしたぬいぐるみだったが。俺の部屋にいるときの星は基本、ステラを抱いて過ごしている。そんな星を抱くのが俺だ。 もし星と一緒にこの映画を観たら、クマのぬいぐるみが可愛いと言いつつ、使われる言葉と内容の下品さに顔を赤く染めるんだろう。 結局。 映画を観ながら思うことは、星のことばかりだった。天気が悪く薄暗い部屋に、開けることのできない瞼。知らぬ間に溜まっていた疲れに誘われ、気がついたら俺はソファーで眠ってしまっていた。 ダラダラと一日を過ごして、星を迎えに行く。 久しぶりに会った星は、どことなく緊張しているように見えて、そんなことろも可愛いと思えた。 「……あの、お久しぶりです」 「久しぶり、なかなか会う時間とってやることできなくて悪かったな」 「ううん、嬉しいです。白石さんが忙しいことは知ってるので……でも、オレに会うために無理とかしてないですか?ちゃんとお休み、できてますか?」 寂しい思いをさせているはずなのに、俺の心配をしてくれる星は、本当に良くできた恋人だと思う。 「できてる、今日は一日ほぼ寝て過ごしてたし。心配してくれて、ありがとな」 とりあえず、星を連れ去るために俺は車を走らせる。信号待ちになり、可愛いらしい星の頭をそっと撫でて。そのまま抱き寄せ、俺を見上げてきた星の唇を塞いだ。 ここの信号に引っかかると、待ち時間が長いことを知っている俺と、頬を赤く染めつつも周りを気にする星くん。 「星、顔真っ赤」 「いや、えっと……あ、赤信号だから」 「どんな言い訳だよ、可愛いヤツだな」 触れるだけのキスを交わし、信号が青に変わっても。星の頬はまだ淡く赤らんだまま、可愛い顔をして俯いていた。

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