252 / 570
第252話
……だりぃ。
寝ぼけた頭と怠けたカラダで、部屋のカーテンを開けて外を見る。しとしとと降っている雨に、余計にだるさが増した気がした。
どうやら、俺の住んでいる地域も梅雨入りしたらしい。
その影響か、ここ数日は雨ばかりだ。
きっと、この降り続く雨が止む頃には茹だるような暑さがやってくる。
煙草を咥えてぼーっとして、少ししてからコーヒーを淹れて。朝食を摂る気にはなれず、とりあえず俺はソファーに寝転がった。
今日は大学の講義もなければ、バイトもない。
かといって、外は雨だし出掛ける気もない。部屋は片付いているし、提出予定のレポートも、すでに終わっている。
……やることねぇーや。
ようやく、時間がとれた週末。
今日の夜21時に、星ん家の裏の公園で待ち合わせ。星を迎えに行く時間まで、特にやることのない俺は映画でも観ることにした。
康介から勧められた映画をサブスクで漁り、とりあえず流し観る。喋るクマが下品ですげぇ面白いからと、康介から言われて観ているが。
俺の隣で何も言わずに転がっているステラも、星が願えば喋るようになるんじゃないかと、かなりアホなことを思ってみたりした。
ステラは、星のお気に入り。
最初は星に似ているからと、衝動買いしたぬいぐるみだったが。俺の部屋にいるときの星は基本、ステラを抱いて過ごしている。そんな星を抱くのが俺だ。
もし星と一緒にこの映画を観たら、クマのぬいぐるみが可愛いと言いつつ、使われる言葉と内容の下品さに顔を赤く染めるんだろう。
結局。
映画を観ながら思うことは、星のことばかりだった。天気が悪く薄暗い部屋に、開けることのできない瞼。知らぬ間に溜まっていた疲れに誘われ、気がついたら俺はソファーで眠ってしまっていた。
ダラダラと一日を過ごして、星を迎えに行く。
久しぶりに会った星は、どことなく緊張しているように見えて、そんなことろも可愛いと思えた。
「……あの、お久しぶりです」
「久しぶり、なかなか会う時間とってやることできなくて悪かったな」
「ううん、嬉しいです。白石さんが忙しいことは知ってるので……でも、オレに会うために無理とかしてないですか?ちゃんとお休み、できてますか?」
寂しい思いをさせているはずなのに、俺の心配をしてくれる星は、本当に良くできた恋人だと思う。
「できてる、今日は一日ほぼ寝て過ごしてたし。心配してくれて、ありがとな」
とりあえず、星を連れ去るために俺は車を走らせる。信号待ちになり、可愛いらしい星の頭をそっと撫でて。そのまま抱き寄せ、俺を見上げてきた星の唇を塞いだ。
ここの信号に引っかかると、待ち時間が長いことを知っている俺と、頬を赤く染めつつも周りを気にする星くん。
「星、顔真っ赤」
「いや、えっと……あ、赤信号だから」
「どんな言い訳だよ、可愛いヤツだな」
触れるだけのキスを交わし、信号が青に変わっても。星の頬はまだ淡く赤らんだまま、可愛い顔をして俯いていた。
ともだちにシェアしよう!