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第253話
家に着いて、星が好きなカフェオレを淹れてやって。ソファーに座ってテレビを観ている星の膝に寝転がり、俺はテレビよりも星の可愛らしい顔を眺めていた。
時折り俺に微笑みかけながら、ふわふわと頭を撫でてくれる星。今日の昼間はこのソファーで、俺は独りで眠ってしまっていたのに。同じ部屋でも、星がいるだけでこんなにも幸せで心地いい。
……これが、せいくんマジックってやつか?
「この女優さん、可愛いですよね。最近よくCMとかにも出ててますけど、オレこういう素朴な感じの女の人好きなんですよ」
幸せを感じていた俺に、テレビを観ていた星がそんなことを言ってきた。俺もチラッと画面を覗いてみるが、整った顔ってだけで俺はなんとも思わないけれど。
「お前さ、女見て可愛いとか思うんだな」
「……なんですか、その言い方。オレが女の子を可愛いって思うの、変ですか?」
テレビに向けられていた星の視線が俺に向き、
星は不思議そうに首を傾げてきた。
「別に、変じゃねぇーけど。可愛いって思うってことはさ、お前は女を抱きてぇー思うってことか?」
「いや、え、それってどういう意味ですか?」
「まぁ、なんつーか……星くん思春期真っ只中だから、女のカラダには興味ねぇーのかなぁって思って。星くん童貞だろ、お前も男だし、そこんとこってどうなんだ」
男としての、ちょっとした疑問だった。
童貞のままというのは、男としてどうなんだって……つっても、星に女を抱かせてやる気なんて更々ねぇーんだけど。
「あの……確かに、ど、童貞ですけどっ。オレは白石さんとしか、そういうコトしたいと思ったことはありません」
頬を染めながら、俺の問いに必死になって答えてくれる星は可愛い。
「女の子は可愛いと思うし、さっきの女優さんみたいに好きだなって思うことはありますけど、女の子の身体に興味持ったことはないです」
きっぱりと言い切った星は、俺なんかよりずっと男らしく見える。興味本位で成り行き任せだった俺とは違い、ちゃんとした考えがある星は本当にいい子だ。
「なんつーか、お前はすげぇーな」
「すごいって、なにがですか?」
「その歳で好きな相手としかしないって言えんの、すげぇーなぁと思って。俺がお前くらいんときは、とりあえず寄ってきた女適当に抱いてたから」
ボソリと呟くように言った俺の言葉に、星の顔から笑顔が消えていく。
「……アンタ今、自分がナニ言ったか分かってます?」
俺との対比を素直に話したが、どうやら俺の考えが足りなかったらしい。俺の過去に嫉妬する星のことまで、把握していなかった俺が全て悪いのだけれど。
「分かってる、悪かった」
また泣かせてしまう。
俺はそう思ったが、星が泣くことはなくて。
その代わり、初めて見る鋭い視線で俺は星に睨まれた。
「白石さん……お仕置き、決定です」
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