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第257話

「卵とろふわぁーっ!」 ステラを抱いて、ぐっすりと眠っていた星だったが。 俺がちょっかいを出し過ぎたせいか、結構すんなり目覚めてくれた。ご飯の前に二人でお風呂に入りたいと、俺に強請ってきた星と一緒に風呂に浸かって。 今は二人並んで、オムライスを食べている。 「とっても美味しい!白石さん、大好きですっ!」 幸せそうな顔をして、オムライスを頬張っている星だが。 ……メシ食って、大好きって。料理上手いヤツになら、コイツは誰にだって懐くんじゃねぇーのか。 と、少しだけ不安なった。 「……白石さん、食べないんですか?」 スプーンを持つ俺の手が止まり、星は不思議そうに首を傾げて訊いてくる。真っ黒な瞳は俺だけを映しているのに、なんとなく腑に落ちない感情に俺は惑わされていく。 「あ?食うけど……星、お前は俺の料理に惚れてんのか?」 「え、何言ってるんですか?煙草吸えなくて、白石さんの頭どうかしちゃいました?」 星はそう言いながら、口に持っていこうとしていたスプーンを皿に置いて、真剣な表情で俺を見る。 「白石さん、確かに白石さんの作る料理は、どれも美味しくて大好きです。でも、オレが惚れてるのは、白石さんの料理じゃなくて……白石さん本人、ですよ?」 「なんか、恥ずいな……」 「白石さん、今日1日よく頑張りましたね。煙草、本当に1日我慢してくれて、ありがとうございました。えっと、まだ時間きてないけど、食後には吸っていいですから……」 ブルーベリー味の甘いキス、してください。 俺の耳元でそう囁いてくれた星は、真っ赤になりながら残りのオムライスを食べていた。 洗い物を済ませて、俺が今日一本目の煙草を味わって吸っていたとき。 「やっぱりオレ、白石さんが煙草吸う姿好きです……まぁ、身体にはよくないんですけどね」 俺の横でステラを抱きしめながら、星がそんなことを言ってきた。星はふわりと笑って、真っ直ぐに俺を見る。 「お前変わったヤツだな、普通煙草嫌うだろ」 「んー、そうなんですけど。甘い香りだからか、白石さんの煙草はなぜか気にならないんですよ。それに煙草吸ってる白石さんって、白石さんらしいから」 ……なんかすげぇー嬉しいけど、言ってるコト、さっぱり意味わかんねぇーわ。 「…んっ」 チュッと軽く、星の唇にキスをして。 「やっぱり、甘いです」 「満足か?」 「うん、お仕置き終了ですね」 ブルーベリーの香りに包まれた俺たちは、今日も1日幸せな時間を過ごすことができた。 アプリゲームで遊んでいた星が先に寝落ちし、 俺も寝ようと一服していたとき。 スマホのバイブレーションの音が部屋に響き、俺はどちらの物か確認してからソレに手を伸ばす。一件の通知が表示されたスマホは、俺のものだった。 今日は少しだけ、星の隣で眠る時間が遅くなるかもしれない。連絡を入れてきた相手を確認した俺は、なぜかそんなふうに思っていた。

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