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第258話
【星side】
梅雨の合間の晴天は、清々しく感じるけれど。オレの心はまだ、雨に濡れているような感覚だ。
それは、今日の出来事が関係しているのかもしれない。いつものように学校に行く途中で、弘樹から振られた話題がオレの心を狂わせたから。
セイは週末、白石さんの家に泊まりなんだなって……オレは、弘樹にそう言われてしまった。一昨日、話したいことがあって白石さんに連絡を入れたら、そう言われたって。
何を話したかは、教えてもらえなくて。
あのときの返事、そのうち聞くからと、そう言って苦しそうに笑う弘樹の笑顔をみて……オレは、何も言えなかった。
その話のあとはなにもなかったように、弘樹が好きなサッカー選手の話を聞きながら学校まで向かって。
オレは、ぼーっとしながら授業を受けた。
白石さんと弘樹は、頻繁に連絡を取っているのかもしれない。一昨日は、白石さんがオレにオムライスを作ってくれた日。
それに、オレは次の日も白石さんと一緒にいたのに。白石さんは弘樹のこと、オレになにも言ってくれなかった。
弘樹も白石さんも、話してくれないってことは……言いたくない話なのか、もしくは話すほどでもない話のどちらか、だと思うけれど。
あんなに苦しそうな弘樹の笑顔を、オレは今まで見たことがないから。
あのときの返事、弘樹の言っていた言葉を思い出す。ふと頭によぎったのは、保健室での出来事で。
あのときのオレは、白石さんのことで頭がいっぱいだったから。弘樹の真剣な言葉を、オレはちゃんと受け止めることができなくて……弘樹のことを、有耶無耶のまま放置してしまったんだ。
弘樹はオレと白石さんの関係を、どこまで知っているんだろう。白石さんは、弘樹にどこまで話しているんだろう。
弘樹は白石さんに憧れていて、あんな人になりたいって、そう笑ってくれているけれど。弘樹と白石さんの関係性を深く知らないオレは、一人で悩んでしまうんだ。
白石さんは、オレを好きだって言ってくれる。
キスも、噛むのも、エッチなコトも、白石さんだからシたいと思える。それは、オレが白石さんを好きだからで。
白石さんじゃないと、ダメだからで。
でも、弘樹は……ずっと、一緒だと思っていた幼馴染みだから。オレが身内以外で、敬語じゃなかった唯一の友達、大事な親友。
はにかんだ笑顔が特徴的で、サッカーバカで、オレのことを可愛いってバカにするけれど、それでもいつも助けてくれていた。
弘樹にはいつだってたくさんの友達がいたのに、オレになんか、合わせなくてもよかったのに。いつも一番に、オレとの約束を優先してくれていたんだ。
なんでオレ、今まで気づかなかったんだろう。
弘樹はいつから、いつからオレを好きだったんだろう。でもオレ、友達じゃ……なかったの。
……ねぇ、弘樹。
オレ、弘樹のためにどうしたらいい?
オレは、どうしたらいいの。
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