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第260話

泣きながらゆっくりと話すオレに、兄ちゃんは優しく背中をさすりながら、大丈夫だよって言ってくれて。オレはしゃくりあげながらも、弘樹と白石さんのことを兄ちゃんに伝えられた。 兄ちゃんは白石さんから、弘樹のことを聞いていたみたいで。白石さんと弘樹とのあいだで、なにがあったのかを全部オレに話してくれた。 弘樹の気持ちを知っている白石さんは、オレのために、弘樹とちゃんと向き合ってくれていて。 それなのに。 オレの幼い頭はどうしたらいいのか答えがでないまま、ただ兄ちゃんに慰めてもらっているだけだった。 「オレ、もうよくわかんない」 そう言ったオレに、兄ちゃんは優しく微笑んでくれる。 「簡単なことだよ、せいとユキちゃんは恋人同士。せいとひぃ君は親友でしょ?親友の関係に、ただ好きって気持ちが混ざり込んでるだけ」 親友の関係、それは、弘樹とオレの関係。 でも、弘樹はオレを男として好きだって言っていたから……それはもう、親友ではいられなくなってしまうんじゃないかって。そう思ったオレに、兄ちゃんは話を続けていく。 「とりあえず、ユキちゃんのことはおいといて。せいはひぃ君の気持ちを知って、どう思った?」 兄ちゃんからの問いに、止まりかけていた涙が再び溢れてくる。 「弘樹はっ、大事な友達。でも、弘樹の気持ちには……」 オレの勝手な気持ち、わがままなオレの思い。 オレが好きなのは、白石さんだから。 「うん、せいはユキちゃんが大好きだもんね」 「でもっ、それじゃあ弘樹は……弘樹の気持ちは?オレが弘樹の好きに応えられなかったら、弘樹は苦しいもん」 苦しそうな弘樹の笑顔が、ずっとオレの頭から離れない。弘樹の気持ちをなにも知らないからって、オレはずっと弘樹のことを苦しめていたんだ。 「なら……せいはユキちゃんと別れて、ひぃ君と付き合うの?それとも、二股でもかけてみる?」 「そんなっ!そんなことできない、オレが好きなのは白石さんだけだもん」 そう言ったオレの頭を、兄ちゃんは優しく撫でてくれた。 「せい、それでいいんだよ。人を好きになることはね、幸せなことばかりじゃないんだ。誰かを好きになることもあれば、反対に好かれることもある……ユキちゃんとせいはお互いに愛し合える関係だけど、ひぃ君はそうじゃない」 「ならオレは、弘樹のためにどうしたらいいの?」 「ひぃ君の真剣な気持ちに、せいもちゃんと真剣に応えてあげればいいんだよ。せいはユキちゃんが好きだって、ひぃ君のことは親友としか思ってないって」 「そんなの……オレ、弘樹を傷つけちゃう」 そう言ったオレの涙を拭いながら、兄ちゃんはぎゅっとオレを抱きしめてくれた。 「せいは本当にいい子だね。でも、それが恋愛なんだ。誰かを犠牲にして得られる幸せもある。ひぃ君を傷つけるって思っているせいも、充分傷ついてるでしょ?お互いに苦しくて辛いことだけど、ちゃんとひぃ君と向き合ってあげて」

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