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第261話
「兄ちゃん……弘樹は、友達のままでいてくれるかな。オレのわがままだけど、弘樹とはずっと親友でいたい」
わがままだけど、それでも。
弘樹は、オレの大事な友達だから。
「それは、ひぃ君次第だけどね。時間は掛かるかもしれないけど……でも、ひぃ君がせいの隣で、親友として笑ってくれる日が来るって、ユキは言ってたよ」
「え、白石さんが?」
「うん、お互いを大事に思い合える関係を大切にしてほしいからって。それはユキとせいの恋愛だけじゃなくて、ひぃ君とせいの友情でも同じコトだからって。ユキは……いつの間に、そんなことをいう男になったんだろうね?」
兄ちゃんはふふって笑いながら、ユキちゃんって本当面白いって小さな声で呟いていた。面白いって……兄ちゃんから見た白石さんって、一体どんな人なんだろう。
「兄ちゃん、白石さんってどんな人?」
オレの質問に、兄ちゃんは考えることもせずにすんなり応えてくれる。
「せいももう知ってると思うけど、オンとオフの切り替えが上手くて、人が良く見えるのは外面だけ。良くも悪くも他人に興味がなくて、いつも面倒くさそうにしてる。でも意外に面倒見が良くて、俺のことをちゃんと構ってくれる……とっても面白い、俺のお友達」
「なんか……うん、白石さんだ」
「あの性格と醸し出してる雰囲気は、出会ったときから変わってないよ。せいを溺愛してるってところ以外は、ね」
「溺愛?」
「甘やかして、可愛がってくれるでしょ?ユキちゃんは、せいに心底惚れてるから……俺の誕生日忘れるようなあの男が、せいの友達だからってだけで、わざわざひぃ君のことまで面倒見ないよ」
「オレ、白石さんに会いたい」
昨日の朝まで、一緒にいたけれど。
ありがとうって、白石さんに伝えたい。
「やっぱり、せいはもうユキちゃんじゃないとダメかぁ……ねぇ、せい。ちょっとさ、スマホ貸して?」
「え?あ、うん……ハイ」
「ありがと」
兄ちゃんは伸びをしながら、オレのベッドに寝転がり、うつ伏せで頬づえをつきながらオレのスマホを弄っていた。
「これでよし!せい涙止まったね、良かった」
兄ちゃんがいてくれて、本当に良かった。
兄ちゃんと話してたら、いつの間にか涙が止まっていたから。
「うん、兄ちゃんありがとう。でも、オレのスマホで何したの?」
「今日の22時半に裏の公園まで来てもらえるように、せいの代わりにユキちゃんに連絡してあげただけだよ?」
オレは驚いて兄ちゃんからオレのスマホを奪い取ると、本当に兄ちゃんは白石さんにLINEを送っていた。
「兄ちゃんっ?!なんで勝手に白石さんに送ってるのっ?!白石さん忙しいんだから、困らせるようなことしちゃだめだよっ!!」
「大丈夫っ!せいが会いたいって言えば、あの男は例え1秒しか会えなかったとしても、せいに会いに来るから」
アタフタするオレをよそに、兄ちゃんはケラケラと笑ってオレの頭を撫でていた。
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