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第262話

……ウソ、本当に来た。 兄ちゃんがLINEを送った時間通りに、白石さんはオレに会いに来てくれた。 車に凭れるようにして煙草を吸っていた白石さんは、家から出てきたオレの手を引き、そっと抱き寄せてくれる。 「星、いい子にしてたな」 白石さんは優しい声でそう言うと、オレの頭を撫でてくれた。大きな白石さんの手とブルーベリーの甘い香り、抱きしめられて包み込まれる感覚に、酷く安心するオレがいて。 やっぱりオレ、白石さんが大好き。 「悪かったな、またお前泣かせちまって……光に、ちゃんと慰めてもらえたか?」 見上げたオレの真っ赤な目を見て、白石さんはとても心配そうな顔をする。 「うん、兄ちゃんから色々聞きました。白石さんのことも、弘樹のことも……オレ、どうしたらいいのかわからないけど、弘樹とはやっぱり親友でいたいです」 「星、お前ならそう言うだろうと思ってた」 「白石さん、オレのことも、弘樹のことも、今日会いに来てくれたことも、本当にありがとうございます……オレ、それだけどうしても伝えたくて」 「気にすんな、俺がしたくてやってることだから」 ふわりと笑ってくれた白石さんの笑顔につられて、オレも自然と笑みが零れる。 「お前、その顔可愛いすぎだ……」 そう言って、ニヤリと緩んだ白石さんの口元。 見上げているオレの顎をそっと掴まれ、落とさたキス。 「あ、ちょ…んっ」 「星……」 ……ここ外っ! ゆっくりと離された唇が、少し恋しくなるけれど。それよりも、平気な顔をして外でオレにキスするこの人をどうにかしなきゃ。 「白石さんっ?!外でこんなコトするの、やめてくださいっ!」 「暗いから、なんもみえねぇーって」 「そういう問題じゃっ、なぃ」 オレの言うことをまったく聞かずに、白石さんはオレの耳をカプリと甘噛みする。力が抜けそうになるオレの身体は、白石さんの腕でしっかりと支えられていた。 「せっかく触れんだから、星の可愛い姿見せろよ」 「もぅ…だめですって、んっ」 いつでも甘い白石さんの囁く声に、身体の奥が熱くなる。こんなに簡単に蕩けてしまうオレの身体が、白石さんを求めようと更に熱を持ち始めたとき。 「ハイ、そこまで」 「光?」「兄ちゃん?」 オレと白石さんのすぐ真横で、兄ちゃんが腕を組んで立っていた。 「こんばんは、ユキちゃん……相変わらず性欲の塊だね。真っ赤になってるせいを可愛がりたい気持ちはわかるけど、ユキちゃんにはTPOをわきまえる頭はないの?」 「あんまねぇー、コイツ可愛い過ぎるから。それより光、ありがとな……星のLINE、送ったのお前だろ?」 「バレてた?せいがユキちゃんじゃないとダメだって言うからさー、せいの代わりに送ってあげたの」 「兄ちゃん、オレそんなこと言ってない」 なんだか恥ずかしくて、俯いたオレの頭を白石さんは優しく撫でてくれて。そんなオレたちの姿を見て、兄ちゃんは嬉しそうに笑っていた。

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