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第267話

【雪夜side】 「白石、またお前に用があるって客が来てる」 蒸し暑い日が続いてる、今日この頃。 バイトを終えてスタッフルームで来月のシフトを確認していた俺に、そう言ってきたのは、まだバイト中なハズの康介だった。 ここ最近、俺は前にも増して女に言い寄られることが多くなってきている。何が良いのか知らないが、俺は星以外に興味がない。 来るだけ無駄だ、と思うのだが。 「女ならお前があしらえ、うっとおしい」 「ちげぇ、男だ。女ならもっと、俺のテンション高けぇよ。高校生くらいの若いヤツだったぜ。スポーツ男子系、白石はバイトそろそろ終わるって言ったら、店の前で待ってるってっさ」 ……誰だよ、ソイツ、高校生くらいでスポーツ男子系って……あ、弘樹か。 「たぶんソイツ、俺の知り合いだ」 「なんだ、知り合いか。俺てっきり白石が、禁断の告白でもされんのかと思った」 「お前、バカじゃねぇーの。そんなこと真顔で言うな、野郎に興味はねぇーよ」 禁断の告白、か。 それなら俺にじゃなく、弘樹は今日星にしてきたハズなんだが……連絡もなしに俺に会いに来たってことは、アイツがなにかやらかしてきたに違いない。 「弘樹は俺の弟みたいなモン、ダチの弟のダチな」 「ん?それってもしかして、あのときの可愛らしい子のダチってこと?」 ……可愛らしい子って、男に使う言葉じゃねぇーだろ。まぁ、確かに星はすげぇー可愛いけど。 「そう。サッカーやってるらしくて、なんか懐かれてんだよ。その可愛らしい子がショップにきたのも、アイツの誕プレ買うためだったし」 「ふーん、なるほど……ってかさ、あの可愛い子って兄貴以外に姉ちゃんとかいねぇの?」 「何言ってんだ、お前。残念ながら、姉貴も妹もいねぇーよ」 姉貴がいたら、紹介してくれとでも言うつもりだったのだろう……そんなに世の中うまくできてねぇーよ、バーカ。 「くっそぉ、マジねぇわ。男であれだけ可愛い顔してれば、姉ちゃんは絶対綺麗だと思ったのにぃ」 「あぁ、姉貴じゃねぇーけど兄貴の光はすげぇーキレイな顔してんぞ、お前見たことなかったっけ?」 顔だけ、だけどな。 光の性格は、確実に俺より悪魔だ。 「いや、わかんねぇ……ってか、綺麗で可愛いって、どんな兄弟だよ。なんで、姉妹じゃねぇんだよっ?!」 「そんなもん俺に言うなよ、それよりお前は仕事しろ。俺は今から、バカ犬んとこ行ってくっから」 「仔猫の次は犬かよ?白石、仔猫ちゃん溺愛中じゃねぇの、浮気?」 「浮気なんてしねぇーよ、俺が抱くのは仔猫だけ、犬は外で待ってる野郎のことだ」 弘樹クンは何を仕出かしてくれたんだか、禁断の告白の内容でも聞きに行くとするか。 「男に興味はねぇ、仕事戻る」 面倒くさそうにそう言った康介とともに、俺はスタッフルームを後にした。

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