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第274話
「ハァ?!思うワケねぇだろっ!」
「なら、なんであんな大人しくしてたんだよ?本当にイヤなら、普通もっと暴れんだろ」
……男に抱かれたい男なワケじゃねぇーし、それなりに暴れると思ってたんだけど。
「お前の雰囲気、なんかエロッち過ぎんだもん……それに、俺が白石を殴ったところで勝てる自信ねぇもんっ!!」
バカなクセして、そんな所は頭働くんだな。
「おお、よくわかってんじゃねぇーか。なら最初から、なめた口利くんじゃねぇーよ」
「うぅ、白石ってマジ怖ぇ……もう、本当ゴメンナサイっ!!」
ソファーに座って足を組み煙草を咥えている俺に、康介はゴメンナサイと言って土下座する。
灸を据えるには充分効果があったようだし、久々に大笑いできたから別に良いけれど。
……コイツ、これがマジな男相手だったら、本当に後ろのチェリー奪われてんぞ。
内心、思った言葉は康介に伝えることなく消化されたけれど。注意事項は伝えておこうと思い、俺は口を開く。
「俺をからかって遊んで許されんのは、俺の兄貴二人と金髪悪魔だけなんだよ。それと、俺が抱くのは仔猫だけ。よーく覚えておきやがれ、無理矢理抱かれんのがお好みな、ド変態こーすけクン?」
「俺はそんなんじゃねぇッ!」
俺に押し倒されて大人しく足開いたクセして、良く言うわ。
「吠える前に返事しろよ」
「ハイ、ゴメンナサイ」
小さく返事をした康介は土下座の体勢を崩して、床にダランと寝転がる。そのままソファーに座る俺を見て、康介はゆっくりと口を開いた。
「あのさぁ、白石……今度さぁ、フットサルやりに行かねぇ?」
フットサルはサッカーより小さなコートで行うミニサッカーみたいなもので、サッカーより人数が少なくて済むため、気軽に楽しめるスポーツなのだが。
「いや、サークルのヤツらとなら行かねぇーよ。女目当てで、ボールも真面に蹴らねぇーヤツらとはゴメンだ」
面倒くさいと思いつつ、康介に誘われて入った大学のフットサルサークルは、女がウザくて顔を出したのは三回ほど。
ゲームとして、フットサルをやるなら未だしも。ボールを蹴ることもなく、ただウザいヤツらとわざわざ金を使って飲みに行くことに俺は楽しさを感じない。
……社会に出ればそんなもん、イヤってほど味あわなきゃなんねぇーのに。
もうこれ以上、女に絡まれるのは御免だ。
それに、やるならちゃんとボールを蹴りたい。
幼い頃の、あの日のように。
「サークル関係ねぇって。高校時代のダチとやんだけど、あと一人足りねぇの。俺が良く行くフットサルコートで開かれる小さな大会でさ、優勝したチームは一万円貰えんだ」
さすが康介、金目当てだな。
でもちゃんと試合形式でやるなら、参加してやってもいいかもしれない。康介もたまには、いい話もってきたと思い、俺は日程を確認する。
「いつだよ、その大会」
「7月7日、七夕の夜だ」
……よりによって、星の誕生日と被ってんのか。
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