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第276話

弘樹から、距離をおきたいって言われたあの日から。もうニ週間以上が過ぎていて。 朝はオレ一人で、登校する日が続いていた。 毎日何気なく、過ごしていた弘樹との時間。 当たり前だと感じてしまうくらいに、二人でいることが自然だったけれど。 弘樹の想いを知って、親友でいることを望んだオレが、寂しいなんて思っちゃいけないんだ。 きっと、弘樹はオレ以上に、苦しい思いをしているはずだから。だから、オレは弘樹を信じて……ただずっと、弘樹が笑ってくれる日がくるのを願うだけ。 少しずつ、大人になっていかなきゃいけないのかなって、そんなふうに感じた親友からの告白は、ちょっぴり苦い思い出になりそうだ。 弘樹のことも、大好きな白石さんのことも。 オレはなるべく考えないようにして、一人の寂しさを紛らわすように、学校での期末テストに向けての勉強に集中している。 それでもやっぱり。 白石さんにはふとしたときに、会いたくなってしまうんだ。 いっぱい勉強したあととか、いい子だなって頭を撫でてもらいたいと思ってしまうし、寝るときだって、オレは白石さんの抱き枕になっていたい。目覚めるときは、白石さんの優しい声で起きたいし、ブルーベリーの甘い香りがとても恋しくなってしまう。 「……会いたい」 小さく呟いた言葉は、溜め息とともに消えていく。 オレが強請れば、白石さんはきっと会いに来てくれる。兄ちゃんが勝手に送ったLINEでも、白石さんは会いに来てくれたから。 でも。 甘えたいけど、甘えたくなくて。 会いたいけど、会いたくない。 ちゃんと会える日まで、待っていられるようにならなくちゃって……その前に、やるべきことをやらなくちゃって、オレは一人で頑張っているんだ。 なんだかんだと忙しそうな白石さんは、ここ最近、週末もなかなか時間が取れなくて。次に会える日は未定のまま、お泊まりどころか、まともに会うことさえできていないけれど。 ……テストが終わったら、白石さんのバイト先まで行こうかな。 自分の部屋の机に向かって、そんなことを考えていると部屋の扉がゆっくりと開いた。 「せい、勉強中?」 「あ、うん。兄ちゃん、どうしたの?」 「んー?せいに今年の誕生日プレゼントは、何がいいか訊こうと思って」 兄ちゃんはそう言いながら、机に向かうオレを後ろから抱きしめる。 勉強しないとって、漠然と思って必死になっていたから……オレ、自分の誕生日、忘れてた。 「んー、欲しいものかぁ……」 本当は、白石さんと一緒にいられる時間が欲しいなぁって思ってたりするんだけれど。そんなコト、兄ちゃんに言っても困らせちゃうだけだし。 「特にない、かな」 そう言ったオレに、兄ちゃんはカレンダーを眺めながらオレの誕生日を確認する。7月7日、今年は木曜日……金曜日までテストがあるから、オレは誕生日を祝っている場合じゃないんだ。

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