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第284話

「……とっても綺麗ですね」 アナウンスで流れてくる星座の説明を聞きながら、リクライニングのシートをぎりぎりまで倒して、オレは映し出される星空を眺めていた。 幼い頃、白石さんが座っていたという席。 お気に入りの場所……そんな素敵なプレゼントをくれた白石さんは、オレと同じように星空を眺めている。 「実際の空じゃ、こんなちっせぇー星まで見えねぇーのにな……何度この説明聞いても、俺には夏の大三角くらいしか分かんねぇー」 星に興味があるのかないのか、よくわからない白石さんの言葉にオレは思わず笑ってしまう。 「綺麗なら、それでいいじゃないですか。オレもよくわかんないけど、こんなに綺麗な星空を白石さんと一緒に見れるだけで、オレは幸せです」 「可愛いこと言ってくれんじゃん、俺も今すげぇー幸せ。久しぶりに、お前に会えたしな」 そう言って、微笑んでくれる白石さん。 星空の光が反射している淡い色の瞳は、とっても綺麗で見惚れてしまう。 ドキドキしてしまうのを隠したくて、オレは星空を見上げた。手を伸ばせば掴めそうなくらい近くに感じるいくつもの小さな星たちは、キラキラと輝いている。 「こんなふうに見てると、掴めちゃいそうなくらいなのに。星って、全く手の届かない所にあるんですもんね」 オレが呟くようにそう言うと、白石さんは身体を起こしてオレを見下ろした。 「俺のは、手の届く所にあんだけど」 「え?」 「星」 艶のある声で呼ばれた名前に、塞がれた唇。 「…んっ」 鼻を擦り合わせるようにして微笑んでくれた白石さんは、オレを強く抱きしめてくれた。 「ほらな、俺の星くんはこうやってキスして、抱きしめるコトができて、カラダ中で感じてひとつなれんだよ……なんて、なんか俺らしくねぇーコト言ってんな」 照れ臭そうに笑う白石さんだけれど、でもオレはそんな白石さんの甘い言葉に、ときめいてしまうんだ。恥ずかしくて、なんて言ったらいいのかは分からないんだけど。 「あの、えっと……」 「星、愛してる」 見つめられた瞳。 星空の中、二人だけの世界。 交わす口付けはこのときを刻み込むかのように、甘く深くなって。ゆっくりと絡められる舌の熱さに、蕩けてしまう。 「ふぁっ…んっ、やぁ」 こんなキスされたら、オレ……白石さんが欲しくなっちゃう。こんな所でシちゃだめなのに……頭では分かっているのに、熱を持つ身体はいうことを聞かない。 「しらっ…ぃ、はぁッ」 チュっと音がし離された白石さんの唇を、オレは潤みきった瞳で名残惜しく見つめてしまった。 「やっばぁ……星くん、すげぇー可愛い」 濡れた唇を親指で拭って、ニヤリと笑うその表情は、オレをいつだって虜にさせる。 何度されたって、足りないキス。 ……どうしよう。 もっと、欲しいよ。

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