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第291話
「白石さん、白石さんっ?!」
「ん、ナニ……」
星にカラダを揺すられて目を覚ました俺は、ボーっとしながら重たい瞼を仕方なく開ける。
「今、何時……ってか、俺いつの間に寝てた?お前、カラダは?辛くねぇーの?大丈夫か?」
「今は22時半です……カラダは辛いですけど、白石さんこそ大丈夫ですか?オレが起きたら白石さん、ソファーで寝てるからびっくりして」
ぼんやりとした視界の中に飛び込んできた星に、俺は心配で色々と訊いてしまうが。星は俺の問いに、思いの外はっきりと答えてくれた。
「それよも、あ、あの、足、足っ!!」
星は真っ赤にながら、床にぺたんと座って一人でアタフタしている。とりあえず俺がソファーで眠ってしまっていたことと、まだ明日にはなっていないこと、星がアンクレットに気づいたことを俺はなんとなく理解した。
タオルケットに包まれたままの星を抱き上げ、ソファーに座らせる。まだ腰が痛そうな星は、寝ぼけた頭で隣に座り煙草を咥えた俺の膝で、仔猫のように丸まっている。
「足のソレ……お前、昨日合鍵だけですげぇー喜んでたから、渡すのすっかり忘れちまってて……もう面倒くせぇーから、直接足につけといた。普通に考えて、合鍵だけが誕生日プレゼントなワケねぇーだろ」
寝起きの掠れた声で星にそう言ってやり、煙草を咥えてゆっくりと呼吸すれば、吸い込んだ煙が俺の頭を少しずつ起こしていってくれる。
「起きたら足についてたから、オレびっくりして……起こしちゃってすみませんでした。あの、白石さん、本当に色々ありがとうございます。オレ、合鍵もアンクレットも大切にします」
小さくそう呟いた星の瞳は、自ら囚われるコトを望むかのようにまっすぐ俺を見つめていた。
「お前の欲しい物、なにがいいかわかんねぇーから、とりあえず俺があげたい物にしといたけど……気に入ったか?」
「もちろん!オレ、白石さんがくれる物ならなんでも嬉しいです。大好きですよ、白石さん」
「俺も星が大好き……あ、俺のコト好きならコレは必ず左足につけてくれ。右足につけると、恋人募集中に意味が変わっちまうから」
「恋人募集中?募集しないです。オレは、白石さんだけの恋人なので」
「ん、お前って本当いい子」
俺は可愛いコトを言ってくれた星の左足に触れ、アンクレットの二重チェーンに指を絡めて遊んでいた。星の滑らかな肌は、いつまでも触れていたいくらい、触り心地がいい。
「さすがに腹減ったな、星はメシ食えそう?食えそうならカッペリーニあるし、冷製パスタ作るけど、どうする?」
「食べたいです、オレもお腹空きました」
「んじゃ、そこで転がっとけ。適当に作ってやっから、ちょっと待ってろ」
普段なら寝起きでメシ作るのとか、面倒で食べずじまいなんてこともザラにあるんだが……星がいるだけで、こうも簡単にカラダが動くのだから不思議なものだ。
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