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第294話

「……なんか、照れますね」 俺の腰に腕を回し、星は顔を隠してしまったけれど。 「星、ありがとな……すげぇー嬉しい。これからは、その呼び方で呼んでくれるか?」 顔を見せないままだが、星はコクコクと頷いてくれる。 ……すげぇー可愛いし、嬉しいけど。 その位置でモゾモゾ動かれると色々やべぇーよ、星くん。 「……ッ」 あ、気づいた。 そりゃそうか、星が顔埋めてるところに俺のナニがあるワケだし。それなりに反応したら、星でも気づくわな。 「……変態、さん」 星は俺に小さく呟くと、顔を伏せたままゆっくりとベッドへ移動しタオルケットに丸まった。名前呼んで恥ずかしがって、本当に可愛いヤツ。 「もう一回呼んで、星」 強請るように囁いた俺に、星は振り向いて珍しく意地悪な笑顔を見せると、俺を見つめてクスっと笑う。 「変態さん?」 「ちげぇーよ、いや、ちがわねぇーけど……さっきみたいに、名前で呼んで」 「いやですぅー、アレだけいっぱいしたのに……まだ元気なのって、おかしいですよ?」 星はそう言いつつも、伸ばした俺の腕の中にすっぽりと収まってくれる。俺の髪をくるくると指に巻き付けて遊んでいる星は、いたずらっ子のような顔をしていた。 いっぱいしたと言っても、一度の行為で何度もイッたのは星だけで。俺が果てるまでのあいだに、泣きじゃくりながら乱れまくってた星くん。 さっきまで、恥ずかしいって真っ赤になっていたクセに。本当に、色んな表情を見せてくれるヤツだ。 「おかしかねぇーよ、星が可愛いから俺の息子っちが反応しただけだろ?」 「息子っちって……その言い方、なんか可愛いです。それならえっちな感じしませんしね、変態さん?」 「うるせぇーよ」 俺を変態さんと呼んで、笑う星。 おそらく、星なりの照れ隠しのつもりなんだろう。星は俺の髪で遊び、俺は星の黒髪を撫でて。お互いに戯れるようにして、触れ合えるこの時間がとても愛おしく思えた。 俺には、星がいてくれるだけで充分だ。 「夏休みになったら、合鍵使ってここに来てもいいですか?」 髪で遊びつつ、そう尋ねてきた星は律儀だ。 「当たり前だ、そのために合鍵渡したようなもんだしな。ある程度のお前の荷物はもうここにあるし、好きに来てくれてかまわねぇーよ」 「嬉しいです……じゃあ、遠慮なく遊びに来ますね」 本当に嬉しそうな顔をして、星は俺の胸に顔を埋める。 そして。 「ありがとう、雪夜さん」 小さく呟かれた名前は、最初に呼ばれたときよりはっきりとしていて。星を抱きしめている俺の腕に、力がこもる。 「星、愛してる」 少しだけ、大人になった星。 16歳になって、俺を名前で呼んで。 これから先、少しずつ成長していく星の姿を俺はいつまでも見守っていくことができるのだろうか。 見つめ合った瞳の中に、お互いの姿が映り込む。 前に、ランが言っていたコト。 一生を添い遂げる覚悟ってやつが、俺はこのとき、できたような気がした。

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