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第295話

俺が目覚めると隣には星がいなくて、代わりに置いてあったのはぬいぐるみのステラだった。いつも通りの目覚めに俺は溜め息を吐き、ステラを睨む。 ……俺が抱きてぇーのは、お前じゃねぇーっつーの……ってか、本物はどこいったよ。 まだはっきりとしない頭でカラダを起こすと、星は俺のパーカーを羽織ってキッチンに立っていた。 自分の服があるのにも関わらず、コイツはなぜ俺の服を着ているのだろう。 星が着るとダボダボの俺のパーカー、でもそれがすげぇーエロくて可愛らしい。星が動く度に揺れるアンクレットが更に男心をくすぐってきて、寝ぼけた頭には丁度いい刺激だった。 そんな星の姿を見て、素直に反応するカラダ。 昨日あれだけヤったというのに、朝から準備万端な息子は元気だ。けれど、星を労うことが優先される今日、お前の出番はない。 とりあえず、星がいたことに安堵しつつ、俺はベッドサイドに置いてある煙草に手を伸ばす。俺が起きたことに気づいていない星は、俺が好きな歌を口ずさみながら冷蔵庫の中を覗いている。 ……俺の星くん、マジで可愛いすぎ……ってか、朝からすげぇー幸せだ。 睨んでしまったステラの頭を軽く撫でて、ジッポを手に取り煙草に火を点ける。ゆっくりと吸い込んだ煙を吐き出すと、甘く漂う香りに気がついた星が振り返り顔を赤く染めて俯いた。 歌っていたことが恥ずかしかったのか、勝手に俺のパーカーを着ていたのがバレて恥ずかしいのか、どっちもか。 「せーいくん、俺の服着て何やってんの?」 俯いた星にそう聞いてやると、星は小さな声で答えてくれる。 「えっと……起きたら少し肌寒くて、前に着せてもらったとき、この服とっても着心地よかったから……勝手に借りちゃいました、ごめんなさい」 ペコリと頭を下げる星。 前に着たときって……ああ、このパーカー星がノーパンだったときに着てたやつか。 「寒かったなら、クーラーの温度上げて良かったのに。ソレ、気に入ったなら着てていいから」 「本当ですか?あの……もうお昼ですし、ご飯作ろうと思って、お腹空いてませんか?」 前髪をピンで留めて、手に卵を持った星は小さく俺に聞いてくる。もう昼って、俺どんだけ寝てたんだ。 「確かに腹は減ったけど、お前起きてて大丈夫なのか?カラダ辛くねぇーの?」 「あ、はい……ご飯作るくらいなら、大丈夫です」 「んじゃ、そのまま俺のパーカー着て、俺の好きな歌口ずさみながら、俺のためにメシ作ってくれ」 ニヤリと口元を緩ませそう言った俺に、星はぷいっと背を向けてしまう。 「恥ずかしいこと言わないでくださいっ!ご飯作りますから、しらっ……雪夜さんは大人しく、ステラと遊んでてくださいねっ?!」 「恥ずかしいコトって、俺が起きる前から星がしてたコトだろ。大人しく待っててやっから機嫌直せよ、星」 俺はそう呟くと、ステラと遊ぶことなく煙草を咥え直した。何をしていても可愛らしい、俺だけの星を眺めて。

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