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第303話

【星side】 誕生日の次の日から、白石さんを雪夜さんって呼ぶようになったオレ。まだ少し、呼び慣れていないけれど……オレが名前を呼んだとき、白石さんはとっても嬉しそうな顔をして笑ってくれたから。 ……これからは、雪夜さんって呼んじゃうんだもんね。 左足首で揺れるアンクレットを見つめていると、思わず頬が緩んでしまう。オレって雪夜さんのモノなんだなぁって、思った自分が恥ずかしかった。 二人でいられる時間は短いから、ついオレは雪夜さんに甘えてばかりいるけれど。それでも笑って、オレを抱きしめてくれる雪夜さんがオレは大好き。 真面目にテスト勉強した甲斐もあって、追試も補習もなく夏休みに入ったオレは、エアコンが効いてる家の涼しいリビングでアイスを食べて寛いでいた。 夏休みに入ったら、雪夜さんの家まで行くって言ったけど、オレは先に課題を終わらせたいから、あともう少しだけ辛抱しなきゃ。 オレがそんなことを考えていると、お昼過ぎまでぐっすり眠っていたらしい兄ちゃんが、リビングのドアを開けてオレに尋ねてきて。 「……あれ?せい、部屋で勉強してたんじゃないの?」 「うん、そうなんだけど……なんか、部屋で勉強する気になれなくて。父さんも母さんもいないし、たまにはリビングでのんびりしようかなって」 「ふーん……あ、そうだ。昨日優と話してたんだけど、8月6日の土曜日にみなと祭りがあるの知ってる?そのお祭りに、四人で一緒に行こうって話になってね」 「四人って、兄ちゃんと優さんと、雪夜さんとオレ?」 「そうそう……って、せい可愛い。雪夜さんなんて呼ばれたら、ユキちゃんデレデレなんじゃない?また優がユキちゃんのこと、気持ち悪いって言いだすよ」 オレにそう言いながら冷凍庫のドアを開けて、オレが食べてるアイスと同じ物を取り出す兄ちゃん。 「もう、呼び方のことは気にしなくていいの。それより、お祭りの話は?」 「ああ、ごめん。ゴールデンウィークみんなで遊んだとき、とっても楽しかったから。お祭りも四人で行きたいねって、ユキちゃんにはもう優から話してあって、ユキちゃんは行くって言ってるみたいだけど……せいはどうする?」 「雪夜さんが行くなら、オレも行きたい」 「それじゃあ、皆で浴衣着て行こう!優が着付けてくれるし、たぶんせいなら優が中学のときに着てた浴衣で充分だと思うから」 「へ、優さん着付け出来るの?母さんは、いつも苦労してやってくれた気がするけど……」 幼いころに七五三の着物や、夏祭りの浴衣を母さんが着付けてくれていたけれど。いつも母さんは衿がどっちだ、帯びがどうだって苦戦しながら着付けてくれた覚えがある。 「優ママの趣味で、小さいころ日本舞踊やらされてたから、優は着付け自分で出来るの。着物も浴衣も、優はたくさん持ってるし……ムカつくけど、優は着物がよく似合う男だよ」

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