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第308話

ぺちっと、軽くオレのおデコにされたデコピン。 「ぅ……」 「結構いい味してんぞ、このアイスクリーム。美味いもん食ってんのに、幸せそうに笑ってないお前なんてらしくねぇーだろ。溶ける前に、ちゃんと食っとけよ」 そう言われて、目の前に差し出されたアイスクリームをぺろっと舐めてみる。 「……んっ、美味しい」 頬が緩んだオレを見て、雪夜さんはふわりと微笑みオレの頭を撫でてくれた。雪夜さんの優しさに流されるようにして、オレの口から洩れ出る本音。 「オレ、子供だなって思って……雪夜さんと全然釣り合わないし、その……こんなオレで、いいのかなって」 「釣り合わない、か。確かに釣り合ってはねぇーなぁ、こんなに可愛い星と俺とじゃ。子供でナニがわりぃーんだ、無理に背伸びする必要なんてねぇーだろ」 子供だろうと気にしない、そう言われているようだった。それでも、大人びた雰囲気の雪夜さんを見ていると自分が情けなく思えてきて。 「でも……」 そんな自分が、嫌にやる。 溶け始めるアイスクリームは、元の美味しさを失っていく。早く食べてしまわないと……オレの心も、不味くなってしまいそうで怖かった。 「でも、じゃねぇーだろ。釣り合わねぇーつっーんだったら、付き合う相手はお互い心底惚れてる相手より、世間体気にしてその辺の女と付き合えってコトか?いくら星に強請られたとしても、んなコト聞いてやれねぇーよ」 煙草を咥えた雪夜さんは、オレの左足首で揺れるアンクレットを見つめていた。こんなオレでも、雪夜さんは求めてくれているんだって……その証拠としてつけられたアンクレットが、太陽の光で輝きを増す。 子供っぽさが抜けなくて、すぐに泣いてしまうし、雪夜さんに甘えてばかりだけれど。 「雪夜さん……オレ、雪夜さんが好き」 小さくそう呟けば、雪夜さんは嬉しそうに微笑んでくれた。 「ん、俺も星が好き。子供でも、これから成長して大人になっていっても……どんな星でも愛してやっから、安心しろ」 「うんっ!」 自分のことは、まだ好きになれそうにないけれど。でも、雪夜さんが好きでいてくれるなら……オレは、それで充分なのかもしれない。 「すみませーんっ!ボール取ってくださーいっ!!」 公園の奥でサッカーをして遊んでいた数人の男の子が、大きな声でオレたちに向かって声をかけてきた。バウンドして転がってくる、赤と白が混ざったサッカーボール。 それを見て、煙草を咥えたまま面倒くさそうに立ち上がった雪夜さんは、跳ねるボールを右足で数回軽くタッチすると、地面にボールを落とすことなく左足で蹴り上げて。 弧を描くようにして跳んでいくサッカーボールは、声をかけた男の子の腕の中に綺麗に落ちていき、しっかりとキャッチされた。 煙草を咥え直し、髪をかきあげた雪夜さんはそしらぬ顔をしてオレの隣に腰掛けるけれど。 あの、ちょっと。 ……カッコ良すぎじゃない?!この人っ!!

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