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第311話
……だっりぃー、マジだりぃー。
そんでもって、クッソ暑い。
最高気温が30度以上、真夏日が続く今日この頃。カンカン照りの太陽に晒されながらの運転は辛く、目が痛くなる。
色素の薄い瞳を恨みつつ、俺は信号待ちになると時刻を確認して溜め息を吐いた。一番日が高くなる時間帯はまだこれからだというのに、存在を主張する太陽が憎い。
上からの直射と、下からの照り返し。
遠くの景色はゆらゆらと揺れ、陽炎が見える。
こんな日に祭りとか死ねる、マジで死ぬ。
アイスコーヒー飲んで、涼しい部屋で星を抱きながら俺はゴロゴロしていたい。
星と公園デートした日から1週間とちょっとが過ぎて、みなと祭り当日の今日、俺は朝から死んでいる。
星が夏休みに入ってから、俺は大学のテストと提出するレポートの作成、いつも通りのバイトと今まで以上に忙しい日々を送っていて。
やっと落ち着ける……そう思った今日は、みなと祭り。朝から金髪悪魔と会わなきゃならないことを思い出し、怠さが残るカラダを無理矢理起こして、俺は優の家まで車を走らせていた。
星が行くって言わなかったら、俺は今頃、家で爆睡しているのに。せめて、昼まで寝かしてほしいところだが……抱き枕の星が隣にいないんじゃ、あまり意味がないと思った。
星は光に連れられて来ると言っていたし、星に会うためだと思えば怠さも少しはマシになる。
星の家から、それほど遠くない優の実家。
相変わらず、広い敷地に感心する。寺とは別にある家と、寺と隣接している保育園。子供が好きそうなカラフルで可愛らしい建物をしている保育園だが、今の俺には色鮮やかで眩しい限りだった。
でかい寺の駐車場に車を駐めて、車のエンジンを切ることはせずに、クーラーの効いた車内で涼む。煙草を咥えて火を点けたものの、なかなか起きてはくれないカラダ。いつもならそれなりに煙草の煙で目が覚めるのだが、余程疲れが溜まっているらしい。
車から降りる気にすらなれない俺は、とりあえず着いた報告をするため、優に連絡を入れた。
『雪夜か、どうした?』
落ち着いた低い声で、電話に出た優。
その落ち着きが、今はとてもありがたく感じる。
「寺着いた、星は?」
『星君なら、光と一緒に歩いて来ると聞いている。そのうちここに到着すると思うが、迎えに行くのか?』
星に会いたい気持ちはあるが、カラダが思うように動かない。完璧に寝不足な今の俺に、光と会う元気はなかった。
「行かねぇーっつーか、行ってやりたいけどそんな気力ねぇー。車ん中で寝とくから、星くん来たら起こして」
『随分とお疲れだな。雪夜、そんな状態で祭りに行って大丈夫なのか?』
「あー、星に会えりゃそれなりにカラダ動くからどーにでもなんだろ……とりあえず、寝る」
優からの返事を待たずに電話を切り、助手席のシートにスマホを投げ捨てる。足を組み、車のアームレストに頬杖をついた俺は、太陽の光から逃げるように俯いて……そのまま、眠りへと落ちていった。
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