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第317話

【星side】 浴衣姿の雪夜さんは、とってもかっこよくて。 オレはそんな雪夜さんの胸に身体を預けて、みなと祭りに向かうために、混雑する電車に乗っている。 「……星くん、さっきから可愛いすぎんだけど」 「え?あ、あの……うまいこと立ってられなくて、ごめんなさい」 慣れない下駄を履いているせいで、オレはうまくバランスが取れずに電車が揺れるたび、雪夜さんの胸にこてんと頭をぶつけている。 男同士でこの近さはさすがにまずいんじゃないかって思ったけれど、混み合っている車両内ではそんなことを気にしている余裕はなかった。 朝の通勤ラッシュ時の電車も、苦手なオレ。 人ばかりに囲まれて、とっても息苦しい感じがする。今は近くにいる雪夜さんの胸にもたれているから、ちょっぴり安心しちゃうけど。 みなと祭りに向かう人たちが大勢いるのか、浴衣姿の女の子を見かけることが多い車両内。やっぱり男のオレなんかより、女の子のほうが華やかで可愛らしいなって思った。 綺麗にお化粧をして、髪型も浴衣に合うように整えられ、着飾っている女の子たち。そんな女の子たちの視線の先には、金髪の王子様がいる。 オレと雪夜さんとは、少し離れたところにいる兄ちゃんと優さん。 サラサラの金髪に真っ白な浴衣姿の兄ちゃんは、誰もが目を惹く妖艶さを放っていた。普段から綺麗な兄ちゃんだけれど、今日の兄ちゃんはいつにも増して綺麗な気がする。 オレたちを着付け終わったあと、一人で浴衣を着る優さんの姿を眺めていたけれど。雪夜さんも兄ちゃんも、優さんの着付け方がいいんだろうなってオレは思っていた。 兄ちゃんとは違って、いつでも落ち着いている優さんは本当に和服がよく似合う人で。オレは改めて、大学生組三人のキラキラオーラに圧倒されている。 そんな雪夜さんはオレが色々考えているあいだも、揺れる電車の中でオレのようにフラつくことなく立っていて。雪夜さんって凄いなぁって、オレは感心していたんだけど。 「んっ、ちょっとナニしてるんですかっ!」 オレの身体を支えてくれていたはずの雪夜さんの手が、浴衣の上からオレのお尻を撫でていたから。小さな声で抗議したオレに、雪夜さんはニヤリと笑った。 「バレなきゃいいかなぁと、思って」 「……セクハラです」 「セクハラって……星くん、おもしれぇーのな。触れる位置にあったから、触っただけだろ?」 「そういう問題じゃないです。恥ずかしいからやめてくださいっ!」 混み合う電車の中では、雪夜さんから離れることもできないし、ちゃんと声を出してやめてほしいと言うこともできない。そんなオレの反応を見て、雪夜さんは満足したのかお尻からは手をはなしてくれたけれど。 降りる駅に着くまでのあいだ、オレは意地悪く笑う雪夜さんに戯れるがまま、声を殺して大人しく俯くことしかできなかった。

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