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第326話
電車の中ので眠っていた星を起こして、カランコロンと下駄の音を聞きつつ、家までの道のりを歩いて帰ってきた俺と星。
今はお互い、ベッドの上。
ようやく触れるコトのできる小さなカラダを抱きしめて、重ね合う唇から甘く漏れてくる吐息。
「んっ、ぁ…」
いつだってすぐに蕩けてしまう星のカラダからは力が抜け、伸ばされた手は俺の浴衣の衿を掴む。
そんな仕草も、かなり可愛くはあるんだが。
意地悪したい気分の俺は、絡め合う舌の熱さを感じつつ、伸ばされた手を掴んで潤んだ星の瞳を見つめた。
「……あの、雪夜さん?」
「んー、ナニ?」
俺は星の浴衣の帯を剥ぎ取ると、仔猫の両手を縛り上げていく。星の帯だけは、正絹でかなり柔らかな素材だから……これなら、星に傷をつけることはないだろうと判断して。
「なん……で」
抵抗せず、大人しく縛られた両手を見つめ、そう呟いた星は不安そうに眉を下げた。その表情が余計に俺を煽るコトに、きっとコイツは気づいていない。
「お前さ、無防備すぎんだよ。こんな可愛い格好して……電車ん中で爆睡してたら、イタズラしてくださいって言ってるようなもんだろ」
帰りの電車内、浴衣姿で艶めかしい首筋を見せて。リーマンエロおやじの視線を受けながら、眠り続けていた星くん。ぐっすり眠っていたから、当の本人は気づかなくて当然と言えばそれまでだが。
「あの……」
自分の魅力にこれっぽっちも気づいていない星は、本当に無防備で困る。言われているコトがよく分かっていないのか、星の頭上には、クエスチョンマークがいくつも浮かんでいるように見えた。
「お前一人だったら、あのクソ野郎に駅のトイレ連れ込まれて襲われてんぞ。そんな変態野郎に星くんは、電車ん中でずっと見られてたんだよ」
実際、そんなヤツだったのかは定かではないけれど。星があのクソ野郎に、そういう目で見られていたことは確かだ。
「そんな変態さんは、雪夜さんくらいですよっ?!」
本当に何も分かっていないらしい星は、乱れた浴衣から白い肌をさらして俺を睨む。俺が変態なのは、自覚があるからいいとして。
……世の中、変態なヤツはいくらでもいんだよ、バカ。
「言ってくれんじゃねぇーか、人が心配して言ってやってんのに」
「それは……ごめんなさいって、あ、ちょっと!」
素直に俺に、謝ってくれた星だが。
小さな支配力を煽るように、上目遣いで俺を見上げた星を俺は遠慮なくベッドに押し倒す。
星を可愛く着付けてくれた優に感謝しつつも、可愛いすぎて壊したくなる衝動は止まらない。
感じやすい耳に口づけて軽く甘噛みしてやれば、星のカラダは簡単に熱を持ち始めるから。
「雪夜ぁ…さんっ、コレ、やだぁ…」
「悪い子にはお仕置き、当然だろ」
「ふぁ、んっ…ッ」
優しくしてやりたくても、止められない悪戯な想い。ソレすらも受け入れようとする星は、俺が与える淡い刺激に、ぴくんとカラダを震わせた。
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