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第331話
【星side】
「はぁ…ぁ、雪夜、さん…オレ」
頭がボーッとして、ふわふわする。
力の入らない身体は、今にも意識を手放してしまいそうで。ゆっくりと閉ざされていく瞼の向こうで、大好きな雪夜さんが優しく微笑んでくれた気がした。
「星、愛してる」
そう最後に聞こえてきたのは、夢なのかもしれないけれど……オレには、そのあとの記憶がなくって。
再び目を開けたときには、幸せそうな顔をして眠る雪夜さんに、オレは抱きしめられていた。
雪夜さんの首筋に残る、オレが噛んだ痕。
手を伸ばしてそっと触れると、雪夜さんの眉がぐっと寄ってしまう。やっぱり痛いんだって思ったけれど、愛しすぎるその表情にオレの頬は緩んでいく。
「……星」
少しだけ掠れた声で、オレを呼んだ雪夜さん。
薄らと開けられた瞼から、とろんっと蕩けた甘い琥珀色の瞳が現れる。
「あの、起こしちゃいましたか?」
「んなコトねぇーよ……お前、カラダ大丈夫か?」
大丈夫じゃないけれど、気遣ってくれる雪夜さんの優しさが嬉しい。いつもより怠い身体は、雪夜さんにたくさん愛してもらえた何よりの証拠だから。
「大丈夫、です」
小さく呟いたオレのおでこに、ふわりと落とされた優しいキス。
「……そっか、昨日の星もすっげぇー可愛かった。後ろだけでたくさんイケて偉かったな、お前ってホントいい子」
そう耳元で囁いて、よしよしとオレの頭を撫でてくれた雪夜さんだけれど。
「浴衣考えた日本人って、きっとド変態だ」
……寝ぼけた頭で、また意味分かんないこと言ってる、この人。
確かに浴衣姿の雪夜さんは色気が溢れていて、オレは花火を見るのも忘れて見惚れてしまった……でも、元々はそういう目的で考えられたものじゃないと、オレは信じたい。
「そういえば浴衣、どうしたんですか?」
浴衣を着たまま、オレは雪夜さんとえっちなことをしちゃった気がする。
「ヤったあとに、お前の身体キレイにして……そのあと浴衣は洗って干した、星が今着てんのは俺の服」
オレの記憶が途切れたあとも、雪夜さんは色々としてくれているんだって、なんだかそう実感させられてしまった。
なんとなく罪悪感に囚われていたオレを、雪夜さんはぎゅっと抱きしめてくれる。
「お前は、なんも気にすんな。星が動けなくなるまで、抱き潰したのは俺のほうだし……星くん、気持ちよかった?」
ニヤリと笑って、オレを見る雪夜さん。
もう、この人はさっきから恥ずかしいことばっかり言うんだから。
「あの、えっと……」
なかなか返事をすることができないオレの唇に、雪夜さんはチュッと軽くキスをして。
「真っ赤になっちゃって、可愛いヤツ……応えなくても分かってっから、安心しろ」
雪夜さんはそういって、身体を起こしベッドサイドに腰掛ける。オレは煙草を咥えた雪夜さんの腰に手を回して、ブルーベリーの甘い香りに包まれながら幸せを感じていた。
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