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第347話

「おはよ、セイ」 「うっわー、本当に真っ黒!」 「だろ?先輩から焦げヒロって、あだ名つけられた」 朝から迎えに来てくれた弘樹は、恥ずかしそうに笑っていて。オレは久しぶりに交わす朝の挨拶も忘れてしまうほど、弘樹の黒さに驚いた。 夏の部活漬けで、本当に真っ黒になってしまった弘樹。 体力作りのために、地獄の夏合宿を終えた弘樹は数ヶ月前より逞しく見える。でもそれはきっと、見た目じゃないんだなって……弘樹の表情を見ていたら、そんなふうに思えた。 「セイ、電話でも言ったけど……これからは、あの人との話も聞かせてくんない?言いたくないなら無理には聞かないけど、俺もう吹っ切れたからさ」 ニカっと笑った表情は、親友として笑う弘樹の顔。 「あの、それ、実はオレも思ってた。聞いてほしいって言うか、雪夜さんのことで弘樹に訊きたいことがあって」 「なんでも訊いてくれていいぜ、俺が答えられる範囲内でだけどな」 ちょっとバカなとこもあるけれど、頼りになるオレの親友。オレの知らないサッカーを現在進行形でやっている弘樹に、オレは訊きたいことがたくさんあるんだ。 「あのね……雪夜さんって、弘樹から見て、サッカーだったらどこのポジションだと思う?」 弘樹は少しだけオレの質問に驚いた顔をしていたけれど、でもすぐに考えて答えてくれて。 「んー、ボランチじゃね?」 「ボランチ、なにそれ?」 ディフェンダーとかじゃなくて、ボランチ……って、なんだろう。サッカーってやっぱり、オレの知らないことだらけだ。 「ボランチは、ディフェンダーより前にいるミッドフィールダーで、主に守備的な働きをすんだけど、それだけじゃなくて、攻撃の組立てしたり、サッカーの要って言われるくらい大事なポジションなんだ」 駅までの道を歩きながら、弘樹はオレの分かりやすいように説明してくれる。 「ボランチやれる人は、走り回れる体力と、プレーにおいての知的さ、視野の広さや正確な判断能力が必要でさ。ドリブルも、トラップも、高いセンスが求められる……あの人、体格良くてディフェンダー向きだけど、頭の回転早そうだし、足元上手そうだからボランチっぽいかなって」 さすが弘樹、サッカーだけに関してはすごく真面目だ。聞き慣れない用語をスラスラと語る弘樹が、今日はなんだか頼もしく見える。 「なんかよく分かんないけど、ありがとう。今度、雪夜さんに訊いてみる。雪夜さんにね、弘樹がフォワードだって話をしたら納得してて……サッカーやってる人なら、そういうの分かるのかなって思って、だから弘樹にも訊いてみたの」 「そっか。セイからサッカーの話されるのってなんか嬉しいな。俺が話してても、今までまったく興味なかったのに、愛の力ってやつ?」 「弘樹のばか。せっかく弘樹の予想が正解だったら、今度お昼でも奢ってあげようと思ったのに」 「うっそ、マジっ?!からかったりしないから、メシ奢ってくれぇッ!!」

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