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第363話

ジーンズのポケットに入れてたままのスマホが震えて、チラリと画面を覗けば、そこにはLINEの通知があった。 「噂をすれば何とやらだ、星から連絡きた」 五限が終わり、放課の隙に連絡をしてきたのだろう。今日は六限まであるから、まだこっちに合流できないと。ごめんなさいのスタンプとともに、送られてきた星からのLINE。 「せい、何だって?」 「まだ授業残ってっから、六限終わってからじゃねぇーと来られねぇーって」 「それじゃあさ、俺たちでせいを迎えに行ってあげようよ。ユキちゃん、せいの学校の場所分かるでしょ?」 「そんなら学校出る前に、必ず連絡しろって送っとく」 仔猫の誕生日、迎えに行った場所ならわざわざ駅前まで出てこなくて済むし、何より早く星に会える。 俺の返信にすぐ既読がつき、星から送られてきたのはOKのスタンプだった。ただそれだけのやり取りなのに、すっげぇー可愛く思えるのは相手が星だからだ。 「星君に会いたいのは雪夜だけじゃなく、光も同様だな。雪夜、悪いが王子様を連れていってくれ」 「なに言ってんの、優も一緒に行くんだよ?ユキちゃん車だから、俺と優は乗ってるだけでいいし、せい拾ったらみんなで優の家に行けばいいじゃん」 「いや、お前こそナニ言ってんだよ」 優の実家なら近いが、俺や光とは違う大学に通う優のマンションは、ここから結構な距離がある。この時間さえ耐えれば星と二人、甘い時間を過ごせると思っていたのに。 俺の考えは、どうやらかなり甘かったらしい。 「だってさ、せいは制服のままだから飲みに行けないし、ユキちゃん家は俺と優入れてくんないでしょ?でも優の家ならみんなで飲めるし、ユキちゃんとせいも外よりかはイチャイチャできる……どう?悪くないと思うけど」 「悪くはねぇーけど、良くもねぇー。コイツん家遠すぎんだよ、運転すんの面倒くせぇーわ」 「えー、せいはユキちゃんの運転する姿が好きなのに?ユキちゃんが嫌っていうなら、今日からの泊まりの予定は……」 俺を見て、ニヤリと笑う光。 どうやら今日の俺に、拒否権はないらしい。 「……ったく、行きゃあいいんだろ。それより、優はそんでいいワケ?」 光の提案だが、行くのは優の家だ。 一応優に確認したが、王子様に従順な執事は俺と違い、嫌とは言わないだろう。 「光がしたいようにすればいい。今日は電車で来いと、念を押されたからな。いつもの王子様なら、車を出せとせがんでくるが……こういうことか、納得した」 「ハイ、決まりぃーっ!ユキちゃんとせいの二人で夕飯作ってね?美味しい料理が食べられるの、期待してるから」 この男は、星のメシが食いたいだけか。 優の家で美味いをメシ食って、酒飲んで……光からしたら、なにより幸せな時間になる。きっと、最初からそのつもりで、俺は光に呼び出されたんだろう。 光の手のひらの上で転がされながらも、俺は光と優を連れて星を迎えに行くためにパーキングへと移動した。

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