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第364話
【星side】
「本当に、びっくりしました。まさか迎えに来てくれてるなんて、思ってなかったから……」
『そのほうが、お前に早く会えんだろ。待ってっから、こっちまで来れるか?』
「大丈夫です、今向かってます」
学校の授業も終わり、雪夜さんに連絡したオレは、大好きな声を聞いたまま学校近くの公園に向かっている。こうして雪夜さんに会うのは二度目、誕生日に迎えに来てくれたとき以来だ。
でも、今日は雪夜さんだけじゃなくて。
兄ちゃんと、優さんも一緒らしい。お昼休みに送られて来たLINEでは、駅前のカラオケボックスまで、オレが向かう予定だったのに。
予定変更で、学校近くまで迎えに来てくれた雪夜さんに少しでも早く会いたくて。オレは目的地の公園前まで駆け足で向かったんだけれど。
雪夜さんの車の前、並んで立つ三人の姿を見つけたオレは、雪夜さんに会えた嬉しさと同時に苦笑いしてしまった。
『……ん、星くん見えた』
腕を組み微笑む優さん、笑顔で小さくオレに手を振る王子様な兄ちゃん、そして、煙草を咥えたままスマホでオレと話している雪夜さん。
「えっと、もう着くので切りますね」
この三人が並ぶと、相変わらずキラキラオーラが凄まじい。オレはこんな人たちを待たせてしまっていたんだと思い、通話を切ると急いで雪夜さんの元まで走り寄っていった。
「せいに早く会いたくて、迎えに来ちゃった」
「こんにちは、星君」
「お疲れさん、いい子にしてたか?」
そう言ってオレの頭を優しく撫でてくれる雪夜さんからは、吸っていた甘い煙草の匂いがする。それぞれタイプの違うイケメンお兄さんの三人から声をかけられたオレは、内心パニックだ。
兄ちゃんはほぼ毎日顔を合わせているけれど、こうやって外で会うとやっぱりいつもと違う感じがするし、優さんの落ち着きとクールさは大人な余裕で溢れていて。
この状況についていけず、困り果ててなかなか返事ができないオレに、雪夜さんはクスっと笑うと、とりあえず車乗れってオレの手を取り助手席のドアを開けてくれた。
「……お邪魔します」
「せーい、今からスーパー寄ったあとに優ん家行くからねー」
「急な予定ですなまいな、星君」
優さんも兄ちゃんも車に乗り込み、言われた言葉にオレは驚いてしまう。優さんの家に、みんなで行くって……どうやら今日は、そのまま雪夜さんの家に泊まるわけじゃなさそうだ。
「星くん、お疲れのところわりぃーんだけどさ……今日は優ん家で飲もうって話になっちまったから、お前も一緒に連れてくな。そんで、夕飯作くんの俺と星らしいからよろしく」
「え?あ、はい……わかりました」
気怠そうに運転する雪夜さんは、オレにそう説明してくれて。二人きりになれないのは、ちょっと残念だなって思ってしまったけれど……そっと握ってくれた手は温く、オレは雪夜さんに触れられるだけで、とても幸せな気持ちになっていた。
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