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第366話
テーブルの上に並ぶのは、オレと雪夜さんが作った料理と、それぞれの飲み物。グラスにお酒が入っているのは兄ちゃんだけで、先に食べ始めていた兄ちゃんと優さんと一緒に、オレと雪夜さんも席についた。
「やっぱり、せいが作るハンバーグが一番美味しい!」
スーパーでの買い物中、兄ちゃんからリクエストされたのはハンバーグ。雪夜さんと二人で前に作ったことがあるから、慣れないキッチンでも上手く作ることができたけれど。
さすがにオレも、お腹減っちゃった。
「えっと、いただきます」
「ん、お疲れさん」
両手を合わせたオレに、そう言って微笑んでくれる雪夜さんは爽やかだ。
「星君、どれも美味しいものばかりだ。ありがとう……それにしても、光よりも雪夜の方が星君のお兄さんらしく見えるな。意外にも雪夜は、面倒見がいいのか?」
オレのお皿に料理を取り分けてくれる雪夜さんと、幸せそうな顔をしてハンバーグを頬張る兄ちゃんを見比べて、優さんはそう言って首を傾げた。
「あー、俺三男だけど、下に妹いるからな。それこそ光よりわがままな、クソビッチが……ずっと華の、アイツの面倒見てきたからじゃねぇーの」
「雪夜さん、言葉が汚いです」
「そう言えば、ユキちゃん妹いたね。せいと同い年だっけ?一つ上だった?確かまだ、高校生でしょ?」
「星の一つ上、やっと出来た女の子だから大事に扱えって言われてさ。クソ兄貴が女取っ替え引っ替えしてるあいだ、俺はずっと華の面倒見てたんだよ」
食事をしながらの話題は、雪夜さんの兄妹の話になって。オレはモグモグと口を動かしながらも、雪夜さんの表情が穏やかなままなことに安心していた。
前に話してくれたときは、少しだけ浮かない顔をしているように思えたから。ろくでもない兄妹しかいないって、そう言っていた雪夜さんだけど……なんだかんだ言っても、兄妹は兄妹なのかなってオレは思っていた。
「白石家って、モテる遺伝子でも入ってんの?俺、ユキちゃんの兄妹まだ見たことないや」
「んー、容姿だけなら俺と長男の飛鳥はそっくり……容姿だけ、だけど。次男の遊馬は、優をワイルドにしてすげぇーやんちゃ野郎にした感じ」
「それはもう、俺じゃなくて別人だ」
「優がワイルドとか、ウケるぅーッ!」
……この優さんが、ワイルドでやんちゃ。
想像できない。
雪夜さんの言葉通りに、オレ頭の中で優さんを変化させてみるけれど。まったく想像できなくて、オレは兄ちゃんのほうを見た。
オレとは違い、楽しそうにケラケラと笑っている兄ちゃんが可愛く思える。やっぱり兄ちゃんは、優さんのことが大好きなんだなぁって……しみじみ感じたオレは、席を立つ雪夜さんを追いかけるように、意味もなく立ち上がった。
「星も、ベランダ来るか?」
「……うん」
きっと、煙草を吸うためだってなんとなく気付いていたから。オレは煙草と空き缶を持った雪夜さんと一緒に、ベランダへと出ていったんだ。
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