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第370話

広い浴槽はジャグジー付きで、爽やかなレモンの香りがするバブルバスに、オレの身体は沈んでいる。ふぅーっと泡を吹いて遊んでいるオレを、後ろから抱きしめる雪夜さんの声は穏やかだった。 「星くん、少しは緊張ほぐれたみてぇーだな」 「うん、お風呂気持ちいいから……一緒に入っても泡が溢れないって、すごいですね」 ガチガチに緊張していたオレだけど、人生二度目のバブルバスにジャグジーのお風呂はとっても安らげる。 雪夜さんの家で初めて泡風呂体験をしたときは、二人で浴槽に浸かると同時にせっかくの泡が流れていってしまったから。 脚を伸ばしても、二人で入っても余裕のある浴槽で、ふわふわの泡に包まれる気分はすごく心地よかった。 「バスタブ広いし、湯も少なめだから一緒に入って丁度だな……星、来て良かった?」 「うん……緊張したけど、良かったです」 いつも一緒に入ってくれる雪夜さんだけど、こんなにのんびりお風呂に浸かることは滅多になくて。なかなか味わうことのできない極楽気分を楽しみながら、オレは雪夜さんの胸に背中を預けていく。 あとは、あの大きなベッドで眠って朝を迎えるのかなって……そう思ったオレは、まだ考えが子供だった。 「星、可愛い」 「んっ…ぁ…耳、いや…」 吐息交じりに噛まれた耳は、オレの弱い場所。 リラックスしたオレの身体に、雪夜さんは甘く痺れる刺激を与えてしまう。 「はぁっ、そこも…だぁ、め」 耳から首筋へと、ゆっくり落ちてくるキス。 オレが逃げるように首を横に振ると、濡れた髪から落ちた水滴がぽたぽたと泡に吸い込まれていく。 「全部ダメだと俺、お前に触れねぇーじゃん」 いやも、だめも、雪夜さんには通用しない。 そんなことくらい分かっているけれど、恥ずかしくて勝手に口が動いちゃうんだ。本当にいやなわけじゃないし、オレが抵抗しないことだって雪夜さんは気づいてるのに。 「だって…全部、感じちゃうから」 雪夜さんの全てを感じ取ろうとするオレの身体は欲張りで、すぐに反応してしまう。 「じゃあ一度に全部責めたら、星がどうなんのか俺に教えて」 「え?ちょっ…んッ、あぁ…やぁっ!」 くちゅっと音を立て舐め上げられた耳、左手で弾かれた乳首に、右手で握られた勃ち上がりつつあるオレのモノ。一度に押し寄せる快感は、お風呂で火照ったオレの身体を更に熱くさせていく。 「やだぁ、雪夜さんっ…あっ、ン…んぅ」 ……こんなの、本当にだめ。 バスルームに響く自分の声を聞きたくなくて、オレは唇を噛んで出てくる声を押し殺した。 「星……声、我慢すんな」 「でもっ…はぁ、んっ…恥ずかしぃ」 「今更だろ?可愛い声、もっと聞かせろ」 囁かれた耳が、熱い。 泡で見えない雪夜さんの両手の動きは、オレのカラダに直接伝わってくる。そんな刺激から逃げることを許そうとしないのは、雪夜さんだけじゃなくて。 ほしいと素直に強請ってしまうオレ自身の欲張りな身体も、雪夜さんから与えられる快感を拒もうとはしなかった。

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