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第374話

【雪夜side】 静かすぎる部屋の中。 寝返りを打とうとした俺は、首筋の傷みに気づいて目が覚めた。 ……ここ、俺ん家じゃねぇー。 寝起きですぐに、辺りを見回しそんな当たり前のことを思ったのにはワケがある。俺がラブホで眠りにつけたのは、今日が初めてだからだ。 違うようで、どれも変わらない女を抱くだけで。今まで欲を満たすためだけに、利用していた場所。 一夜だけの関係だったこともあれば、何度か同じ相手だったこともあったが、そんな女たちの前で俺が眠りにつけたことは過去に一度もなかった。 どうしても側にいてほしいと、泣きつかれたときにだけ、仕方なくベッドの上にいたことがあるくらいで。カラダを繋げても、信用もナニもあったものじゃない女の前で寝る気にはなれなかった。 暇潰しのようにセックスをし、息をするように煙草を吸って。自分に何の価値もないような生き方をしていた俺にとって、特に緊張する場でもなく、むしろ慣れている空間ではあるけれど。 星がいるだけでこんなにも安心して、深く愛し合える場所へと変わることを実感した。 連れてきたときには緊張で固まっていた星だったが。今は広いベッドの真ん中で、俺の胸に顔を埋めて幸せそうに眠っている。 星が楽しみにしていた俺と二人だけの時間を、昨日は光が奪ってしまったし……男同士で入れるラブホは少ないからと、優から昨日の礼としてここのカードを渡されたときは、寄らずに真っ直ぐ帰るつもりだったんだが。 ……たまにはこういう場所も、悪くねぇーのかも。 「ん……」 小さな吐息を漏らしてモゾモゾと動く星を抱きしめ、寝癖のついた黒髪に触れる。昨日は髪を乾かしてやる余裕もなくベッドに連れてきたからか、毛先があちこち跳ねているのも可愛く思えた。 こうして見ていると、本当に仔猫ような星。 普段は大人しくて内気なコイツが、俺だけに見せる乱れた姿を思い出し、口元が緩んでしまう。 昨日のエロい星くんは、可愛いすぎた。 というよりも、俺の理性が保てなかったと言った方がいいのかもしれない。星の身体を気遣うこともできずに、俺は欲に溺れたから。 ……バックから犯すようにヤんのって、すっげぇー気持ちイイし興奮すんだけど。 縋るようにシーツを握り締めるコイツの姿に、思わず俺の本音が洩れた気がする。 今は俺の背中に回らされているこの小さな手が、俺を求めて必死に縋り付いてくるのが堪らなく好きだから。星には、ベッドのシーツすら掴んでほしくなくて。 昨日はどっかの高級車の名がついた、星には少しキツイ体位とらせてしまった……ごめんな、星くん。 何度抱いたって足りなくて、伝えきれない愛は溢れていくばかりだ。優しく甘やかしてやりたいときもあれば、反対に、壊れるまでめちゃくちゃにしたいときもある。 小さな身体でそんな俺の気まぐれな思いすら受け入れる星は、まだ深い眠りについたままだった。

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