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第375話

眠っていたときには、俺に抱きついていた星だったが。目覚めたあと、ぱちりと大きな瞳で俺を見てすぐに、星は俺から背を向けてしまった。 昨日の夜のコトを思い出し、恥ずかしくて俺と目を合わせられない星は、耳まで赤く染まっていることにきっと気づいてないんだろう。 マジックミラーではないことは、ヤる前に確認済のデカい鏡。そこに映し出されていた昨夜の星の姿は、本当にエロくて。 コイツの羞恥心を煽るには、充分な役目を果たしてくれた鏡に俺は少なからず感謝してやった。 「昨日はお風呂入って、さっさと寝るって……雪夜さん、そう言ってたのに……ウソつきです」 「いや、風呂入って寝たコトには変わりねぇーだろ」 ……そんなもん、ラブホまで連れてきたからには最初っから抱くに決まってんだけど。 何もしないから安心して、なんて。 そんなウソらしい言葉で星の緊張をほぐした覚えはないし、たかがAV観ただけで真っ赤になったコイツに、俺はこの場でセックスするとも言っていない。 でも、俺。 残念ながらウソはついてねぇーんだよなぁ、星くん。 「むぅ、いじわるぅー」 拗ねっ子モードに入った星は、俺に背を向けたまま掛け布団を奪い取っていく。 「あ、こら。布団全部持ってくんじゃねぇーって」 掛け布団を巻き込んで、広いベッドの上をコロコロと転がっていく星。コイツには身体をキレイにしてやったあとでバスローブを着せたからいいけれど。 ……下着一枚だけの俺は、布団ねぇーとさみぃーんだっての……ってか、コイツ、絶対そのまま転がって落ちんだろ。 「うわぁッ!!」 俺の思った通り、ベッドの端っこギリギリで落ちかけた星を布団ごと抱き留めてやる。とっさに伸びてきた星の小さな手は、俺の髪を掴んでいた。 「危なかっしいヤツだな……いくら広いからって、そのまま転がってったら落ちるに決まってんだろ」 俺の予想を裏切らない星の行動に、ただただ笑ってしまう。本人は相当びっくりしたのか、俺にぎゅっとしがみついて離れない。そんな星のおデコにキスをしてやり、ポンポンとあやすように背中を撫でてやった。 「昨日は意地悪してごめんな、カラダ辛くねぇーか?」 「うん……あの、オレも、ごめんなさい」 「拗ねてるお前も可愛くて好きだから、謝んねぇーでいい。落ちて怪我しなくて良かった」 星が拗ねんのも、落ちそうになんのも。 普段のコイツを見ていれば、ほぼ予測することはできたから。 「オレ、意地悪な雪夜さんも好き……」 小さな声でそう言った星は、俺の首筋についた爪痕を撫で、愛おしそうにふわりと笑う。可愛い口を少し開いて星が次にする行動も、俺の予想の範囲内。 「いてぇーよ、星くん」 カプっと歯を立て、遠慮がちに俺の鎖骨に噛みつく星。少しだけ、チクリと刺すような痛みが俺のカラダに走る。噛んで残る痕と俺の表情を交互に見つめて、星はすっげぇー幸せそうな笑顔を今日も俺に見せてくれた。

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