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第390話

【雪夜side】 星と一緒にいた週末。 バイト続きで溜まった疲れも、兄貴と会ってやさぐれていた俺の心も。星と過ごしているだけで、俺は自然と癒されていた。 これと言って、特にデートらしいデートをするわけでもなく……家にいるあいだ、一緒にいんのになかなか構ってやれないことが申し訳なく思ったけれど。 俺がコーチのバイトのことを考えていても、星は拗ねることなく俺の隣で笑ってくれていた。星といると、俺はいい意味で、気を遣うことなく自然体でいられることを実感した。 夢のままで充分だと思っていた夢は、プロからコーチへと新たに形を変えて、俺の心の中に居座り始めている。自分で掴み取ったものじゃなく、兄貴から与えられたものってのがなんとなく腑に落ちないままだけれど。 俺にも星と同じように、前に進むためにやるべきことができたから。一歩ずつ、お互いに夢を追いかけて、歩んでいけたらいいと思う。 サッカーに興味を持って、色々と俺に質問してくる星はすげぇー可愛くて。星が俺のために作ってくれた夕飯は、愛情と幸せがたくさん詰まった味がした。 温もりを肌で感じ、二人で笑って眠りに就くことができる幸せ。 お互いに思い合って支え合える関係が、小さくではあるけれど、確実に築けているように思うから。星の特別な笑顔を、この先の将来も守り続けてやりたいと……心からそう思えた、とても穏やかな週末だった。 それにしても、星くんは愛しすぎて困っちまう。何かに悩み眠れぬ夜を過ごすことがあるのなら、そのときは側にいて抱きしめてやりたいのに。俺に噛みついて安心できるのなら、いくらでも噛ませてやんのに。 ……俺はもっと、アイツの支えになってやりてぇーのに。 今はまだ、何もしてやれない自分の情けなさに笑うしかなくて。 帰り際。 離れたくないと泣いてしまう星をただ抱きしめて、想いを伝えてやることしかできない自分が悔しかった。 今日も、星のいない部屋で独り。 煙草を咥えて考えてみても、俺がアイツにしてやれることは極わずかしかない。 想うことは、いくらでもしてやれる。 けれど、アイツが望む二人だけの時間を、毎日一緒にいられるささやかながらに幸せな日々を、今の俺には与えてやることができないから。 せめて一緒にいられる時くらいは、触れ合うことが許される空間で、星のこと愛していると伝えてやりたい。 身体で繋がり、お互いの存在を確かめ合って。 交わす言葉で、愛しい想いを囁いて。 それでも溢れてくる欲と愛の塊は、優しさに姿を変えて。俺ができる最大限の愛し方で、星を包み込んでやりたくて。 正しい愛し方なんて、俺には分からないけれど。俺といて幸せだと、可愛い笑顔を見せてくれる星がいるから。こんな俺でも愛おしいと、側にいたいと泣いてくれるお前がいるから。 俺は俺なりに、今できることを一つずつやっていくしかないんだろうと思った。

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