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第396話
光に連れてこられた場所、それは駅前のカラオケ店。受付けで使うつもりのないマイクやらなんやらを適当に受け取り、指定された部屋へと入って。テーブルを挟み向き合った俺に、光は尋ねてくる。
「……ユキ、ここがどこだか分かる?」
「弘樹が、西野ってヤツを目撃した場所か」
軽く頷き笑う光は、学園祭で何を見てきたのだろう。百聞は一見にしかず、事実を目にした光にしか分からない情報を訊き出さないことには、話も始まらないのだが。
「色々訊きてぇーコトあんだけど、とりあえず、その西野スタイルってのナニ?気持ちわりぃーから、前髪だけでも元に戻してくんねぇーか」
謎の西野スタイルを披露されたままじゃ、真面に話す気になれない。そう思い、俺は光に問い掛けた。
「ユキちゃん待ってるあいだ、暇だったから西野の髪型真似てみたの。だから西野スタイル、ここまで女っぽくなるとは思わなかったけど……あの子、自分の魅せ方よく分かってる」
そう話しながらも、見慣れた姿に戻っていく光。この悪魔がここまで落ち着いているということは、星に何かあったわけじゃなさそうだと判断し、煙草を咥えた俺に、光はスマホの画面を見せてくる。
「ユキ、これが西野って子。せいより小さくて、見た目は可愛い系……ただ、可愛いのは見た目だけ。でもまずは、せいの話からするね」
可愛い笑顔を見せる星の隣で、笑っているソイツ。光が真似た通りの髪型、星より小柄で女みたいなヤツだと思った。吸い込んだ煙りを吐き出し、画面を見つめたままの俺と話を進めていく光。
「その写真はひぃ君が俺に送ってくれたやつだけど、俺たちが心配するようなことは何もなく、学祭は終わったよ。今はひぃ君が、せいを家まで送ってくれてる」
「ふーん、星は楽しそうにしてた?」
「うん……すっごい楽しそうで、同級生ともそれなりに上手くやってるみたいだった。学祭の詳しい話は、このあとせいから聞くといいよ。もちろんユキちゃんは、俺を家まで送ってくれるでしょ?」
「送ってくのは構わねぇーよ、俺も星に会いてぇーし。そんで、星に何もなかったのにお前がわざわざ俺に会いに来た理由、コイツの話を聞かせろ」
コンっと軽くスマホの画面に触れ、俺は光にそう言い足を組む。俺を真っ直ぐに見つめた光は、淡々と話し始めた。
「西野悠希、お家柄のいいお坊っちゃんで一人っ子。両親は、その子に関心なし。中学のとき、身体売ってるって噂が学校内で広まりいじめにあって、半ば逃げるように今の高校に進学……そこで出会ったのが、うちのせいくんって感じかな」
聞かされた西野ってヤツの正体に、俺から大きな溜息が漏れる。
「すっげぇー厄介な野郎じゃねぇーかよ……ってか、お前はこの短時間で、どっからその情報を入手したんだ?」
光が学祭にいた時間は、そう長くはないハズだ。それなのに、やけに詳しく話をする光が気になり俺がそう訊くと、悪魔はニヤリと妖しい笑みを浮かべてみせた。
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