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第397話

「本人が話してくれたの。学祭行って、先にひぃ君捕まえて、西野の情報を聞き出したあとに、ひぃ君にはせいと模擬店回るように仕向けたんだ」 いつから企んでいたのかは分からないが、おそらく計画的犯行だろう。抜け目ない男の話を黙って聞きつつ、俺は深く呼吸する。 「それでね、西野を一人にさせたあと、せいの知り合いってことを西野には黙って俺から声掛けた。キミ、男に抱かれてるでしょ?って言ったら、あっさり俺についてきたよ」 平気な顔をして、そう話す光。 悪魔は、やはり悪魔だった。 「お前が自ら、ちょっかい出す輩になってきたってワケ?」 「そういうコト」 ……なんとまぁ、恐ろしいヤツだ。 「色々嗅ぎ回るより、本人に聞く方が早いと思って。それに、今日は絶好のチャンスだったから。立ち入り禁止の空いてる教室連れ込んで、脅しながら軽く撫でまわしてあげたら、すぐに白状したよ。あの子、可愛い顔してヤってることは非道だった」 「いや、お前もな。誰もそこまでしてこいなんて、頼んだ覚えねぇーんだけど。ソレ、星にバレたらやべぇーんじゃねぇーの?」 「まさか、バレるワケないでしょ。ユキ、俺を誰だと思ってんの。自慢じゃないけど裏工作は得意だし、せいを傷つけるようなことはしないよ……ユキとの、あの一回を除いてはね」 確かに、過去を振り返ってみても、光は完璧に裏の顔を隠すことができていた。この性格の悪さが時として役立つ世の中って、いかがなものなんだろうか。 それにしても、星に対する光の愛情は度を超えている気がする……って、それもこれも今に始まったことじゃなかったが。 「問題は、そんな西野の過去じゃなくて今だよ。せいと一緒にいるってことと、西野がひぃ君の言う通り、今も身体売ってるってコト。せいに直接関係なくても、今後なにかしらの影響は出てくる」 「ソイツが、今でも身体売る理由は?」 「誰かに、必要とされていたいんだって。お金が欲しいわけじゃなくて、自分の存在価値を確認するため。でもその裏で、誰にも愛してもらえてないことも気づいてるみたい」 「お前、どこまで話し込んできてんだよ」 「ある程度白状させたあと、思いっきり優しく寄り添ってあげたら、自分からペラペラ話してきたんだもん。まだまだ子供だね……あの子、詰が甘過ぎる」 俺の想像を遥かに超えることを仕出かしてきて、冷酷な顔をして笑う光。でもこれが、星の前では良き兄として、キラキラ輝く王子様の顔をして笑うのだから大したものだ。 全ては愛する弟のため。 俺にはできない、光なりの愛し方。 俺だけじゃなく、たくさんの愛情を注がれている星。しかし、光の話の内容からそんな星とは対照的なのが西野だと思った。 百歩譲って男に抱かれる立場なのは星と変わらないとしても、そこに交じる愛がなければ受け入れる虚しさは計り知れないものがある。 「愛されない寂しさを埋めるために、野郎にカラダ差し出すって……ソイツ、それしか方法知らねぇーのな」 そう呟いた俺に、光は頷き息を漏らした。

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