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第411話

「お前にしか見せない顔、ねぇ……そういや、あの金髪悪魔、俺のダチにまで色気振り撒いてったぞ。ソイツ、光がキレイだからって一目惚れしたっぽい」 光が男だと分かったあとで、それでも構わないと俺に言ってきた康介。しかし冷静になって考えてみれば、男でもいいなんてなんとも大胆な発言をしたものだ。 「一応訊いておくが、その友達とやらは女性か?」 フッと笑い、俺を見る優。 高校の時から俺のダチに女がいないことを知っているクセして、確認のために問われた言葉に俺は苦笑いする。 「俺のダチにアマはいねぇーよ、野郎だ」 「それは、雪夜の友達が可哀想だ。また一つ、光の玩具が増えたのか……王子様は人を魅了することが趣味のようなものだからな、致し方ない」 「光がどこまで、ちょっかいかけてきたのか詳しく聞いてねぇーけど。アイツ、星のダチまで喰いかけてんだ……やりたい放題にも、ほどがあんじゃねぇーのか?」 「それは、光が星君のために取った行動だろう?やりたい放題なのは、今に始まったことじゃないからな。もう今更、気にもならないさ」 動揺することもなく、平然と受け答えする優。 思えばこんなふうに優と二人、色恋沙汰の話をしたことなんて過去に一度もなかったからか、いつも以上に落ち着いて見える優がなんとなく羨ましく思えた。 「お前は、妬いたりしねぇーのかよ?」 心の余裕がある優とは違い、俺はここまで寛容になれそうにない。けれど、もしかしたらこの執事も、嫉妬のような感情を持ち合わせているのではないかと。そう思い尋ねた俺を見て、優は小さく息を吐いた。 「俺が妬いて、ナニになる。光の自由気侭な行動には全て裏、闇が存在する。陰と陽、ソレを感じ取ってやれなければ、俺は光の執事でいる意味がなくなる。素直になれない王子様からの、愛情表現だと思えばいいだけのことだ」 「……ヨク出来タ執事デスコト」 やはり、優の精神年齢は俺よりずっと上だ。 それは恋愛に対しても変わることがなく、オッサンはオッサンの考えのままらしい。 けれど。 丁寧な手つきで箸を置いた優は、僅かに微笑みグラスを手に取った。 「そうでもないさ……手のひらの上で転がされているのは、いつだって俺の方だからな」 俺は、ここまで大人になれそうにない。 星が光のような行動を取ることなんて、有り得ないとは思うが。もしも、星が故意的に魅力を振り撒き、人を惹きつけることを楽しんでいるとするなら。 俺は、おそらく嫉妬に狂うだろう。 それこそ、星くんの手足縛って監禁……なんて、一瞬でも頭に浮かんだ俺は異常かもしれない。 ただ、優のように毛並みのいい上質な猫を放し飼いできるほど、俺に心の余裕がないのは確かだった。ましてや、星はまだ仔猫だから……この先、どのように成長していくのかも分からないってのに。 何処にも行かずに俺だけを求めて擦り寄ってくるアイツを、気の向くままに野放しにしてやることなんて、俺にはできそうにないと思った。

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