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第413話
【星side】
賑やかな学園祭が終れば、また通常通りの授業に戻った学校生活。オレは相変わらず西野君と一緒に行動することが多くて、今は横島先生の実習の授業中。
今日作るのはマカロニグラタンで、西野君と同じ班のオレは、木べらを持ってクルクルとホワイトソースを混ぜている。
弱火でほんのり加熱したバターと小麦粉に、小量ずつ牛乳を加えていく。牛乳を入れては混ぜてを繰り返していくけれど、ホワイトソースを作る上で大事なのは火加減だから。
コンロの横に濡れた布巾を用意していたオレは、そこで鍋を休ませつつ木べらを動かしていくんだ。
「青月くん、ホワイトソース作るの上手っ!」
オレの隣でマカロニを茹でている西野君は、焦げることもなく、ダマにもなっていない真っ白なソースを見て目を輝かせている。
「ありがとう、西野君……上手に作るコツ、このあいだ教わったばかりなんだ」
褒めてもらえたのは嬉しいけれど、実はこのコツを教えてくれたのは雪夜さんで。
雪夜さんと一緒にハンバーグを作ったとき、ホワイトソースも手作りしたんだけれど。溶かしたバターに小麦粉を入れ、そのまま牛乳を入れようとしたとき、雪夜さんはオレを後ろから抱きしめてきて、上手に作るコツをオレに教えてくれた。
木ベラを持ったオレの手を、そっと握って。
火を弱火にし、溶けたバターと小麦粉を手早く混ぜながら、焦げないようにここで小麦粉にちゃんと火を通しておくと、ダマになんねぇーんだよって……そういえばあのときも、余ったソースで作ったのはグラタンだった。
なんて。
オレは授業とまったく関係ないことを考えながら、出来上がったホワイトソースをぼんやりと眺めていた。
「本当に上手にできてるけど、コツって誰に教えてもらったの?まさか、横島先生に予習がてら訊きに行ったりとかしてた?」
首を傾げてオレにそう聞く西野君は、やっぱり可愛らしい。少し大きめのコックコート、深めに被った帽子はくりっとした西野君の瞳を更に大きく見せていて、なんだか女の子みたい……そう思いながら、オレは西野君の質問に答えた。
「ううん。えっとね、付き合ってる人が教えてくれたんだ。あの人、オレより料理上手だから。横島先生のやり方と同じで、やっぱりすごいなって思っちゃった」
焦げて色がついてしまうと、ホワイトソースにならないからって。濡らした布巾の上で鍋を休ませてあげることを教えてくれたのも雪夜さんだった。
「ああ、独占欲強い彼女さんね。料理できる人って、そんなにポイント高いんだ……」
「ポイント?」
「ううん、なんでもない。僕はあとで横島先生にコツ訊きに行こっと」
「あとでじゃなく、今聞いたらどうだ?」
オレと西野君の後ろから、突然聞こえてきた低めの声。その声にビクッと反応したオレと西野君は、恐る恐る振り返る。
そこにいたのは、料理人モードの横島先生で。
滅多に笑わない横島先生がオレたちに笑いかける姿は、なんとなく雪夜さんがオレに見せる意地悪な笑い方に似ているような気がした。
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