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第414話

「横島先生っ!?いつからそこに……」 そう声をかけたのは、西野君だ。 マカロニの茹で時間を気にするオレと、横島先生と話し出す西野君。 雪夜さんのことを思い出すと、授業中だということを忘れそうになる。でも、オレたちが今日の実習で作らなきゃならないのはグラタンなんだ。 マカロニを茹でたあと、更にそこからソースと和えてオーブンで加熱されることを考慮し、どのタイミングでマカロニをザルにあげるかがポイントだと横島先生は言っていた。 各班で作り上げた料理は、横島先生に試食してもらってチェックが入る。その酷評を受け止める心の準備を今からしておかないと、反省する前に凹んでしまうから。 そう思い、手を止めて横島先生と話し出してしまった西野君の代わりに、オレは茹でているマカロニと睨めっこする。 「青月の彼女の話をしているくらいから、俺はお前たちの後ろにいたぞ。西野は、青月と仲がいいんだな」 「青月くんは、彼女さんにコツを教えてもらったそうなんですよ。僕にはそんな人いないから……横島先生、コツがあるなら教えてください」 そう言って、上目遣いで横島先生を見る西野君は、なんだかとても色っぽく感じる。そんな西野君に微笑みかける横島先生も、なんとなくいつもと違う気がして。見つめ合う二人……なんて捉え方をしてしまったオレは、一人で頬を染めていた。 オレも西野君みたいに甘え上手になれたなら、雪夜さんにもっと可愛がってもらえるのかなって……おかしなことを考えつつ、茹で上がったマカロニをザルの中へと移し替える。 熱いから火傷すんなよって、煙草を咥えてオレの隣で笑ってくれた雪夜さんは、今頃どこで何をしているんだろう。 集中しきれていない頭と、勝手に動くオレの体。淡々とグラタンを作っていくオレは、西野君が横島先生から聞いていたホワイトソースを作るコツをすっかり聞き逃していた。 いつの間にかいなくなっていた横島先生は、違う班の女の子達に囲まれながらも、お説教をしている。 「誰がブラウンソース作れって言った。お前ら女子どもは、話す前に手を動かせッ!!」 「だって先生、なかなかこっち来てくれないんだもーん。先生待ってるあいだに、小麦粉焦げたぁーっ」 ぷぅーっと頬を膨らませ、笑う女の子。 横島先生は厳しい先生だけど、生徒から好かれている先生だなって思う。 「青月くんっ、ごめんね。マカロニは僕の担当だったのに……って、横島先生はいつも通り怒ってるや」 「本当だね、ちゃんとやる事やってたら怒られないはずだと思うんだけど。それより西野君は、横島先生からコツ聞けた?」 「うんっ!ばっちりだよ。今日の夜にでも、早速試してみることにする」 横島先生に憧れて、調理の道を目指しているらしい西野君はとても勉強熱心だ。オレより真面目なんじゃないかと思うくらいなのに……こんな西野君が、本当に弘樹の言ってるようなことをしているなんて、やっぱりオレには思えなかった。

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