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第421話

オレが咥えて濡れた雪夜さんの左手は、オレの耳をなぞって遊んでいる。力が抜けた身体を支えてくれる右手は、制服のスラックスに手を掛けているけれど。 なかなか触れてはくれないソコは勃ち上がり、下着を濡らして刺激を待ち望んでいるというのに。 「星……ココ、噛んでいい?」 「んっ、ぁ…だめぇ」 雪夜さんが触れる場所は、さっきからオレの耳ばかりで。舐め上げられ囁かれるたび、身体中が熱くなってオレは泣いてしまった。 「ッ…あぁ、やだっ…もぅ、いやぁ」 耳の裏、輪郭、耳朶を甘噛みされるたびに、雪夜さんの熱い吐息がかかるから。それがとても気持ち良くて、ぴくんと身体を震わせ涙を流すオレは、雪夜さんにしがみついてイヤイヤと首を振る。 「ココだけでこんなに泣けんのに、すっげぇーエロい顔してる……星くん、そんなに俺がほしかったんだ?」 頬を伝う涙を親指で拭って、雪夜さんは優しい声で意地悪く笑うんだ。そんな雪夜さんの問いにオレが小さく頷くと、揺らぐ瞳はふわりと細められ、雪夜さんはよしよしとオレの頭を撫でてくれる。 オレが大好きな雪夜さんの姿と、オレが望んでいた甘やかされ方に、心が溶けていくのを感じる。学園祭が終わったあの日から、ずっと求めていた時間。 暖かいセーターからは、甘い煙草の香りに混ざる雪夜さんの匂いがして。こうして身体を重ねているときに強く感じる惹き付けられるような、雪夜さんだけのやたらとイイ香りに頭の奥までクラクラしていくんだ。 「んぅ…」 でも、これ以上焦らされるのなんて我慢できなくて。オレは無意識に、雪夜さんの首に顔を埋めて噛みついていた。痕が残る箇所をちろりと舐め上げて、またカプっと痕を残すと雪夜さんから吐息が漏れる。 「ッ……星くん、悪戯すんじゃねぇーよ」 色気のある雪夜さんの声に身体は疼き、耐えることのできないモノからはダラダラと先走りが溢れ出して下着を濡らして泣いている。そのことに気づいているのに、一向に触れてくれない苛立ちは、言葉となって雪夜さんに牙を剥いて。 「だってっ…もっと雪夜がほしいもんッ!いっぱい触って…耳だけじゃ、やだ…早くぅ、早くひとつになりたい、からッ」 一度狂ってしまえば、わがままだらけだ。 抑えていた感情をぶつけて、雪夜さんの上で泣きじゃくりながらも揺れてしまう腰の動きは止められない。 「あー、クッソ……」 「んっ…ふぁ、ゆきッ…ぁ」 ソファーとテーブルの間、深く重なるキスとともに頭を支えられ押し倒されたラグの上。 乱れていく互いの呼吸に、重ね合い絡まる指先は、手の甲に爪を立て雪夜さんを傷つける。オレを求めて狂ってほしい、溺れるなら雪夜さんも一緒に墜ちてほしいから。 「……オレだけの、雪夜を見せて?」 甘かったはずの瞳は、鋭く揺れて熱が篭る。 見つめ合い再び重なった唇からはもう、オレの乱れて喘ぐ声しか聞こえなかった。

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