425 / 952

第425話

身体が痛い。 色んな箇所の痛みを感じて、オレは目を開けたけれど。部屋の中は真っ暗で、オレを抱きしめて眠っているであろう雪夜さんの表情はよく見えなかった。 そんな暗闇の中、少しだけ不安になったオレは身をよじりながら雪夜さんの胸に顔を埋める。兄ちゃんが言っていたこと、雪夜さんを虜にさせるとっておきの方法は、どうやら効果がありすぎたみたいで。 雪夜さんと一緒に果てた、あのあと。 オレが一度、目を覚ました後も求められた身体は強過ぎる刺激に耐えきれず、雪夜さんがイッてしまう前に眠りについてしまった。 試すのは雪夜さんの家にいるときだけにしろって、兄ちゃんが言ってたのはこういうコトだったのかなって……頭のどこかで思ったオレは、今更感じ始めた羞恥心で身体を熱くさせる。 「……星くん、起きた?」 「いや、あのっ……オレ、寝てます」 寝てると思っていた雪夜さんからの声がして、オレは恥ずかしくて嘘をつく。なんとなく包まれている罪悪感は、オレが先に落ちてしまったから。 「眠ってるヤツは、返事しねぇーだろ」 クスッと笑われ言われた言葉に、オレが慌てて寝たフリをして黙り込むと、雪夜さんはわしゃわしゃとオレの頭を撫でてくれた。 「起きてんだろ。身体、今回すげぇーしんどいよな……わりぃー、大丈夫か?」 「うん……」 とっても優しい声で色々と心配してくれる雪夜さんは、やっぱりオレのことを一番に考えてくれていて。痛む身体で雪夜さんに抱きついたオレを、雪夜さんはぎゅっと抱きしめてくれる。 静かな部屋の中で感じる、雪夜さんの温もり。 オレが今いる場所は柔らなベッドの上で、包まれる優しさに安心してしまう。 自分のした行為を、とても恥ずかしく感じていたオレだけれど。まだ顔がはっきり見えない今なら、素直な気持ちを雪夜さんに伝えられるから。 「あの、ごめんなさい。オレ、ずっと雪夜さんとひとつになりたくて……ステラにまで妬いちゃって、オレ……えっと、雪夜さんにはオレだけ見ててほしいんです」 小さく呟いたオレは、独占欲の塊だ。 でも、行動だけじゃ伝えられない想いはきっと、言葉にするしかないんだろうと思うから。 黒く闇のような嫉妬心は、いつでもオレに襲いかかってくるけれど。こんなふうに雪夜さんが受け止めてくれるなら、オレは兄ちゃんの言う通り、雪夜さんに溺れるだけで充分なのかもしれない。 「満足、できたか?」 「え……あ、うん」 訊かなくても分かるくらいに乱れていたのに、わざとらしく尋ねてくる雪夜さんは意地悪だと思った。 でも。 「やっぱり……その、怒ってますか?」 満足できていないのは、オレより雪夜さんのほうなんじゃないかって。そう思い雪夜さんに尋ねると、雪夜さんはオレのおでこにキスをして。 「怒ってねぇーよ、ちゃんとお前だけ見ててやるから……だから、そんな不安そうにすんな」 「ん……雪夜さん、大好き」 オレのすべてを満たしてくれた雪夜さんに、オレはぎゅっと抱きついていたんだ。

ともだちにシェアしよう!