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第426話

【雪夜side】 こんな煽られ方をしたのは、初めてだ。 バイトだったはずの今日、康介と入れ代わりでシフトを調整した結果、時間が取れた俺は星を家で待つあいだにクリスマスのデートコースを色々調べてたんだが。 久々に会った星くんに、俺はかなりの勢いで煽られまくって……気がついたら日付けも変わり、今は夜中の1時過ぎ。 悪戯を仕掛けて、我慢できなくなった星からほしいと言わせるつもりではいたけれど。色々ヤることヤって、仮眠をとり食事を済ませ、風呂に入ったあと。  星に体力がないのは分かっているのに、途中で落ちて寝ちまうことも、分かっていたハズなのに……俺が欲に溺れて二度目に求めた星の身体は、快楽に耐えきれずに寝落ちてしまった。 それもこれも、全部俺のせいだ。 コイツの身体に掛かる負担は、俺よりずっと大きいから。欲に任せて抱くことは極力避けてきたってのに……いきなりステラも煙草も奪われ、呼び捨てであんなコトを言われたら。 ……優しく抱けるワケ、ねぇーだろ。 抱き寄せた小さなカラダに残る痛みや疲労感は、すべて俺が星に与えたもの。俺がイケなかったことをコイツが気にする必要はこれっぽっちもない。  「あの……えっと、雪夜さん?」 「ん、どーした?」 遠慮がちに、怒っているのかと尋ねてきたかと思えば、今度は少し楽しそうに声を出す星くん。 「雪夜さんは、オレの制服姿とか清楚な服装が好みなんですか?」 何を訊いてくるのかと思えば、これまた可愛らしい質問に俺の頬は緩む。 「露出が多い服装よりかは、制服とかしっかり着込まれてる方がスキだな。脱がし甲斐あるし、狙って着飾るより自然な方がいい」 「でも、じゃあ……オレが学生じゃなくなったら、雪夜さんから嫌われちゃいますか?」 「いや、お前なら何着てても抱くから。それに、学生とか関係なく、俺はお前じゃなきゃダメなんだよ」 「それならよかったです。オレも、雪夜さんじゃなきゃいやだなって思うから」 布団からひょっこり顔を出し、俺の首に腕を回して抱きついてくる星は可愛いすぎる。艶やかな髪が俺の頬を撫でて、感じる温かさは欲とは違う幸福感を与えてくれる。 明日は二人で、映画でも観に行こうかと思ってたんだが。どうやらその予定は、予定だけで終わりそうだ。 不安からも開放され、小さな吐息を漏らし再び眠りについた星をベッドに残して。俺は暗闇の中、スマホの灯りを頼りに煙草を咥えた。 布団から覗く星の左足首に巻かれたアンクレットは、仄かな灯りの中でもキラキラと光っている。 星にはまだ伝えていない、クリスマスの予定。 コイツはサンタに何を望むんだろうかと考えつつ、サンタなんかいねぇーよと思う自分がいたりする。 何も言わない星だけれど、俺のできる範囲でコイツの望みは叶えてやりたいと思うから。行事ごとに興味はないが、二人で過ごす特別な日を少しずつ増やしてやりたくて。 咥えた煙草が短くなり、その煙が消えるまで。ぼんやりと考えてはみたものの、純粋無垢な仔猫の欲しいものなんて、サンタじゃない俺に分かるワケがなかった。

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